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結論:公立は制度安定、私立は「学校を選んだ時点でほぼ決まる」

公立教員は地共済(地方公務員共済組合)+給特法+育児・介護休業法のセットで、産休・育休の給付が制度として固定されている。 産休中の給与は満額支給が保証され、育休中の共済組合給付も全国共通のルールで計算される。

私立教員は話が違う。 産休中の給与は「無給」が法定で、出産手当金(健保から支給)が実質的な収入源になる。 育休中の給付は健保組合ごとに付加給付の有無が異なり、育休中の保険料免除の手続き先も公立とは別になる。

一言でまとめると、私立教員は「どの学校の健保組合に属しているか」で、産休育休中の手取り水準がほぼ決まる。

転職・就職を考えている人は、学校選びの段階でこの点を確認しておいたほうがいい。


※本記事の情報は2026年5月時点のものです。 私立学校は健保組合・就業規則が学校ごとに異なるため、具体的な給付内容は勤務先事務・加入健保組合・社会保険労務士に確認してください。


産休期間:公立は「6週+8週」が法定、私立は就業規則に要注意

公立教員の産休期間

公立教員の産前産後休暇は、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育介法)と地方公務員法に基づき以下のとおり。

  • 産前休暇: 出産予定日の6週間前(多胎は14週間前)から
  • 産後休暇: 出産翌日から8週間(本人が請求し医師が認めた場合は6週間後から就業可)

法定の最低ラインと同じだが、公立の場合は「特別休暇」として有給扱いになるのが大きなポイントだ。

私立教員の産休期間

労働基準法65条が適用されるため、産前6週・産後8週の最低ラインは公立と同じ。 ただし、就業規則で産休期間を延長している学校もあれば、法定最低限のみの学校もある。

確認すべきは「産休期間中が有給か無給か」という点。 労働基準法は産前産後の休暇取得を保障しているが、その間の「給与支払い義務」は定めていない。 つまり、私立は就業規則に有給規定がない限り、産休中は無給が原則になる。


産休中の給与:最大の差がここに出る

項目 公立教員 私立教員
産休中の給与 全額支給(有給特別休暇) 原則無給(就業規則による)
給付の根拠 地方公務員法・給特法 学校の就業規則
出産手当金 支給されない(給与があるため) 健保組合から支給(標準報酬月額の2/3)
付加給付 なし(給与全額が出るため不要) 健保組合によって上乗せあり

公立:産休中も月給がそのまま振り込まれる

公立教員の産前産後休暇は「特別休暇」扱いのため、基本給・教職調整額・地域手当などすべてが支給される。 出産手当金は健保(共済)が給与補填として支給するものだが、公立は給与全額が出るため、そもそも受け取らない。

→ 産休中の給与詳細は教員の産休中の給料はいくらかで整理している。

私立:出産手当金が主な収入源になる

私立教員が加入するのは、主に私学事業団の私学共済か、学校単独の健康保険組合のどちらか。

出産手当金の計算式は健保共通で以下のとおり。

出産手当金 = 標準報酬日額 × 2/3 × 支給日数
標準報酬日額 = 標準報酬月額 ÷ 30

月給30万円の場合を試算すると、

  • 標準報酬日額: 30万円 ÷ 30 = 10,000円
  • 出産手当金(日額): 10,000円 × 2/3 ≒ 6,667円
  • 産休56日間の合計: 6,667円 × 56日 ≒ 373,000円

公立が産休中に月給×2〜3ヶ月分を丸ごともらえるのと比べると、差は歴然だ。

ただし、私学事業団や一部の健保組合では付加給付がある場合もある。 付加給付とは、健保組合が法定の出産手当金に上乗せして支給する独自給付のこと。 付加給付がある健保組合であれば、実質的な給付水準が法定の2/3を超える場合もある。

確認方法は「健保組合名 付加給付」で検索するか、直接組合に問い合わせるのが確実だ。


育休給付:共済給付 vs 雇用保険給付金

産休中の給与以上に、育休中の給付は公立と私立で仕組みが根本的に違う。

項目 公立教員 私立教員
給付の窓口 地方公務員共済組合 ハローワーク(雇用保険)
給付の名称 育児休業手当金 育児休業給付金
給付率(育休開始〜180日) 標準報酬月額の67% 休業前賃金の67%
給付率(181日〜) 標準報酬月額の50% 休業前賃金の50%
非課税扱い
社会保険料免除 共済掛金が免除 社会保険料(健保・厚年)が免除

給付率の数字は同じ67%・50%だが、計算のベースが異なる点に注意が必要だ。

公立の育児休業手当金は「標準報酬月額」が基準で、上限もある(毎年度変更されるため共済組合HPで確認を)。 私立の育児休業給付金は「休業開始前賃金日額」が基準で、上限額はハローワークのルールに従う。

どちらも手取り換算では「育休前の手取りとほぼ同水準」になるケースが多い。 理由は社会保険料と所得税がかからないためだ。

→ 育休中の手取り金額シミュレーションは教員の産休・育休の給料はいくら?を参照してほしい。


保険料免除:両方あり、ただし手続き先が違う

育休中の保険料免除は公立・私立どちらにも適用される。 ただし、手続き先がまったく違う。

公立教員の場合:共済掛金が免除される

公立教員は地方公務員共済組合に加入しているため、育休開始と同時に共済掛金(年金払い退職給付・短期掛金・福祉掛金など)が免除される。

手続きは学校から共済組合への届け出が基本で、本人が直接動く必要はない学校が多い。 ただし、申請が漏れると免除が適用されないケースもあるため、育休前に事務担当者に「共済掛金の免除手続きは学校側でやってもらえますか?」と確認しておくと確実だ。

→ 免除額の具体的な計算は教員の育休中は保険料が免除されるで月給別に試算している。

私立教員の場合:健保・厚生年金保険料が免除される

私立教員は健康保険・厚生年金保険の被保険者のため、育休中は健保料・厚生年金保険料が本人分・事業主分ともに免除される(健康保険法・厚生年金保険法の規定による)。

手続きは事業主(学校)が年金事務所に申出書を提出する。

重要なのは、免除期間中も年金加入期間としてカウントされる点だ。 将来の厚生年金額には影響しない。

比較項目 公立 私立
免除対象 共済掛金(短期・長期・福祉) 健保料+厚生年金保険料
手続き主体 共済組合経由 年金事務所へ事業主申出
将来の年金への影響 なし(納付扱い) なし(納付扱い)
免除期間 育休中(月単位) 育休中(月単位)

私立教員が確認すべき就業規則の3項目

私立に勤めている先生、または私立への転職を考えている先生が必ず確認しておきたいのが次の3点。

1. 産休中の有給規定

「産前産後休暇中の給与の取り扱い」に関する条文を確認する。 「特別休暇として有給とする」という記載があれば、公立と同水準の保護を受けられる場合もある。 記載がない、または「無給」とある場合は出産手当金が実質唯一の収入源になる。

2. 育休の取得条件・期間

育介法の改正により、2022年以降は男女問わず育休取得しやすい制度整備が義務化されている。 ただし、就業規則の更新が追いついていない小規模私立もある。 「育休の取得実績」を採用面接・入職時に確認するのが現実的な手段だ。

3. 加入している健保組合の付加給付の有無

加入健保が「私学共済」か「単独の健保組合」かによって付加給付の水準が変わる。 私学共済は全国統一ルールがあるため、付加給付の確認がしやすい。 単独健保の場合は組合名を確認して直接照会するか、採用担当者に聞くのが早い。


公立・私立の産休育休まとめ比較表

比較項目 公立教員 私立教員
産休期間 産前6週+産後8週(有給) 産前6週+産後8週(有給かは就業規則による)
産休中の給与 全額支給 原則無給+出産手当金(標準報酬月額の2/3)
産休中の付加給付 不要(給与全額あり) 健保組合によって上乗せあり
育休中の給付窓口 地方公務員共済組合 ハローワーク(雇用保険)
育休中の給付率 67%→50%(標準報酬月額基準) 67%→50%(休業前賃金基準)
保険料免除 共済掛金が免除 健保料・厚生年金保険料が免除
将来の年金への影響 なし なし
制度の安定性 高い(全国統一) 学校・健保組合による

私立教員のための準備チェックリスト

妊娠が分かったら、できるだけ早い段階で以下を確認する。

  • 就業規則の産休・育休関連条文を読む (人事・事務担当者に「就業規則の写しをもらえますか」と依頼)
  • 加入健保組合の名称を確認する (給与明細の健保欄、または保険証の保険者欄)
  • 出産手当金の申請時期・書類を確認する (産後8週後に請求するが、書類の準備は産前から始めると余裕ができる)
  • 付加給付の有無を健保組合に問い合わせる (「産休中の付加給付はありますか」と直接聞くのが確実)
  • 育休中の給付金申請はハローワーク経由と把握する (公立の共済組合経由とは違うため、初めてだと混乱しやすい)
  • 育休の取得実績・取得期間の上限を確認する (法定は子が1歳まで、最長2歳まで延長可能)
  • 産休前にFP相談で育休中の家計設計をシミュレーションする

産休・育休中の家計は「給付金だけで乗り切れるか」を事前に試算しておくと、育休中の精神的な余裕がまったく違う。

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よくある質問(FAQ)

Q. 私立教員でも産前6週から休めますか?

A. はい。労働基準法65条により、私立教員を含むすべての女性労働者は産前6週間(多胎は14週間)の産前休業を請求できます。 学校側がこれを拒否することはできません。 ただし、休業中が有給か無給かは就業規則による点は前述のとおりです。

Q. 私立教員の育休はいつから取れますか?

A. 原則として出産翌日から産後休業(8週間)が終わった後、育休に入れます。 育介法改正(2022年10月施行)により、育休を2回に分けて取得することも可能になりました。 具体的な取得開始日・書類提出期限は就業規則と学校の事務担当者に確認してください。

Q. 私立から公立に転職後、産休育休の待遇はどう変わりますか?

A. 公立に転職した時点から地方公務員共済組合の適用を受けるため、産休中の給与全額支給と共済組合の育児休業手当金が適用されます。 ただし、共済組合の給付条件には在職期間要件がある場合があります。転職後に産休育休を予定している場合は、採用された自治体の共済組合か人事担当に確認してください。

Q. 公立教員の産前休暇は6週間より前から取れますか?

A. 法定は産前6週ですが、体調不良の場合は「病気休暇」として取得できます。 また、妊娠初期からの「早期休暇制度(通院休暇等)」が地方公務員法上認められている自治体もあります。 所属する自治体の給与・勤務条件を定めた規則を確認してください。

Q. 育休中の保険料免除を申請し忘れたらどうなりますか?

A. 遡って申請できる場合もありますが、申請期限や遡及可能な期間は公立(共済)・私立(年金事務所)それぞれのルールによります。 気づいた時点でなるべく早く、事務担当者・共済組合・年金事務所に相談してください。


まとめ

公立と私立の産休育休制度の核心的な違いは、**「制度が法令+共済でほぼ固定されているか、健保組合+就業規則で変わるか」**という一点に集約される。

公立教員は、産休中も給与満額、育休中も共済給付67%→50%、保険料免除——というセットが自動的に適用される。 私立教員は、出産手当金(2/3)が基本で、付加給付の有無・就業規則の有給規定・加入健保組合の内容によって実態が大きく変わる。

私立教員や私立への転職を考えている人にとって、産休育休の条件は「給与水準」と同等以上に重要な労働条件だ。 就職・転職の時点で就業規則と健保組合の内容を確認する習慣をつけておいてほしい。

育休前に家計全体のシミュレーションを組んでおくと、給付が下がる期間も焦らずに乗り越えやすい。 気になる人は産休前に一度、FP相談を使ってみるのがおすすめだ。

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