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「産休に入ったら手取りはいくらになるの?」
この問いに対して、世の中の記事の多くは「育休中は給付率67%」で答えを止めている。 でも実際に家計に影響するのは「口座に入ってくる金額」であって、支給率ではない。
住民税は育休中でも引かれ続ける。 共済掛金は育休中は免除される。 産休中の給与は満額だが、税と掛金は普通に天引きされる。
この記事では、公立・私立の制度の違いも含め、「実際の手取り額」にフォーカスして整理した。 年収400/500/600万円×育休期間別のマトリクス表も作ったので、自分のセルを探してほしい。
この記事の使い方——妊娠フェーズ別の読み方ガイド
妊娠を考えている段階の人 → 第4章(マトリクス表)から逆算すると全体像がつかみやすい。
妊娠判明直後の人 → 第1章から順番に読むと「何がいつ変わるか」が時系列で整理できる。
育休延長を検討中の人 → 第7章に延長パターン別の手取り比較表がある。
復職前の人 → 第9章に「手取りが戻るまでのタイムライン」と復帰前チェックを置いた。
どのフェーズでも、第4章の「マトリクス表」が中心になる。 自分の年収に近い行を先に確認してから読み進めると理解が早い。
第1章:「産休中の手取り」と「育休中の手取り」は全然違う
結論から言う。
産休中の手取りは、産休前とほぼ同じ。 育休中の手取りは、産休中より大幅に下がる。
この2つを混同している教員が非常に多い。
産前産後休暇(産休)は「特別休暇(有給)」として扱われるため、給与は全額支給される。 共済掛金・所得税・住民税も通常どおり引かれる。 つまり手取りの計算は「産休前と何も変わらない」。
育休に移行すると、給与がゼロになり、代わりに共済組合から育休手当金が支給される。 手当金は非課税のため所得税は引かれない。 共済掛金も免除される。 しかし住民税は引かれ続ける。
ここを整理したのが下の表だ。
| 期間 | 給付の種類 | 課税 | 共済掛金 | 手取りの目安 |
|---|---|---|---|---|
| 産前産後16週(産休) | 通常給与(満額) | 課税 | 徴収あり | 産休前と同水準 |
| 育休〜180日目 | 育休手当金(67%) | 非課税 | 免除 | 年収500万で約21万円/月 |
| 育休181日目〜 | 育休手当金(50%) | 非課税 | 免除 | 年収500万で約15.5万円/月 |
「給与の67%」は税引き前の支給率であって、手取り額ではない。 この点が混乱の根源になっている。
公立教員は「育児休業給付金」ではなく「育児休業手当金」
よく混同されるが、公立教員が受け取るのは「育児休業給付金」ではない。
民間会社員の育児休業給付金は雇用保険の制度だ。 公立教員は雇用保険に加入していないため、ハローワークではなく公立学校共済組合から「育児休業手当金」として支給される。
申請先・書類の様式・支給サイクルがすべて違うので、ウェブで検索した情報が「雇用保険ベース」の話だった場合は読み替えが必要になる。
第2章:産休中(産前産後16週)の手取り計算
基本の計算構造
産休中の手取り計算は、産休前と変わらない。
産休中の手取り(月) = 月給 − 共済掛金(健保+年金相当) − 所得税 − 住民税
給与は「特別休暇中も全額支給」という扱いのため、計算式がそのまま続く。 産休中だからといって給与明細の項目が変わるわけではない。
年収500万円モデルで実際に計算してみる
30代後半・公立小学校教員(担任経験あり)のイメージ。 月給(各種手当含む)約34万円、標準報酬月額34万円。
| 項目 | 金額(概算) |
|---|---|
| 月給 | 約34万円 |
| 共済掛金(健保+年金) | 約4.5万円 |
| 所得税 | 約1.5万円 |
| 住民税 | 約2.3万円 |
| 産休中の手取り目安 | 約25.7万円 |
「産休中に給料が減る」というイメージを持っている先生が多いが、数字で見ると手取りはほぼ変わらない。
産休前に「手取りはいくらだったか」を給与明細で確認して、それとほぼ同じ金額が来る、という理解で合っている。
産休中に注意すべきこと
ボーナス(期末手当・勤勉手当)への影響
産前産後休暇期間は「勤務したものとみなす」扱いのため、ボーナスの算定上は除算されない。 産休中にボーナス基準日(6月1日・12月1日)が来ても、ほぼ満額に近い水準で支給される。 詳細は教員の産休ボーナスはいくら?を参照してほしい。
ふるさと納税の年間上限
産休中(給与満額)の年はふるさと納税の上限が通常どおり計算できる。 ただし育休年は給与収入が大幅に下がるため、上限額が激減する。 産休に入る年は「産休前の在職期間+産休中の給与収入」をベースに計算し直す必要がある。
第3章:育休中の手取り計算——「67%」は手取りではなく支給率
この章がこの記事の核心だ。
「育休中は給与の67%が出る」という情報は事実だが、それは税引き前の支給率の話だ。 実際に口座に入る金額ではない。
育休中の手取り計算式
育休中の手取り(月) = 育休手当金(非課税) − 住民税(前年所得ベースで継続)
※共済掛金は免除のため引かない
※所得税は手当金が非課税のためゼロ
育休中は掛金が免除されるので「手当金そのまま手取り」に近くなる。 ただし住民税だけは引かれ続ける。
年収500万円モデルの場合、住民税の年額は概ね15〜20万円前後(扶養・控除状況による)。 月換算で約1.5万円が毎月振込書として届く。
住民税の「落とし穴」——育休7ヶ月目が最もキツい理由
育休中に多くの先生が驚くのが、7ヶ月目の手取り減少だ。
育休開始から180日(約6ヶ月)は手当金が月給の67%。 181日目からは50%に切り替わる。
この切り替えと住民税の徴収が重なる月は、ダブルで家計が締まる。
| タイミング | 月手取り目安(年収500万) | 変化 |
|---|---|---|
| 育休1〜6ヶ月目 | 約21.3万円 | — |
| 育休7ヶ月目 | 約15.5万円 | 約5.8万円の急落 |
この段差を事前に知っているかどうかで、家計の準備がまるで変わる。 育休7ヶ月目前後に現金が薄くなるタイミングを見越して、産休中に手元資金を積んでおくのが基本の備えだ。
育休中の共済掛金免除——手取りを下支えする制度
育休中は共済掛金が全額免除される。 公立教員の共済掛金は月給の約13〜14%相当で、年収500万円モデルでは月4〜5万円にのぼる。
手当金の支給率が67%・50%と下がっていても、掛金免除がその分を下支えしている。 支給率だけを見た感覚より、実質的な手取り減少幅は小さい。
「掛金免除を加算した実質的な受取率」で計算すると、育休前半は月給比で約80%前後に相当するケースもある。
参考: 厚生労働省「育児休業給付の内容と支給申請手続について」(民間との比較用)
育休中の家計を数字で把握したいなら
この章まで読んで「自分のケースだと月いくら残るか」がまだイメージしにくい人もいると思う。 家族の収入・住宅ローン・子どもの数などの条件が加わると、一般的な試算表では追えなくなる。
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第4章:【独自計算表】月収別×休業期間別の手取りマトリクス
ここがこの記事の中心だ。 自分の年収に近い行を探して、育休期間と照らし合わせてほしい。
計算の前提
- 「手取り」= 手当金 − 住民税概算 + 共済掛金免除分を考慮した実額ベース
- 住民税は前年収入をもとに概算(年収別の目安値を使用)
- ボーナスは含まない(手当金の計算ベースは月給のみ)
- 標準報酬月額: 年収400万→約28万円、年収500万→約34万円、年収600万→約41万円
- 計算の詳細は公立学校共済組合「標準報酬制の概要」を参照
- あくまで概算。実額は所属の共済組合に確認のこと
産休期間(16週)の月平均手取り目安
| 年収(目安) | 月給概算 | 共済掛金 | 所得税+住民税概算 | 手取り目安 |
|---|---|---|---|---|
| 年収400万円 | 約28万円 | 約3.5万円 | 約3万円 | 約21万円 |
| 年収500万円 | 約34万円 | 約4.5万円 | 約4万円 | 約25.5万円 |
| 年収600万円 | 約41万円 | 約5.5万円 | 約5万円 | 約30.5万円 |
産休中は手取りが大きく変わらないことが数字で分かる。
育休1年間の月別手取り変化(年収500万モデル)
| 期間 | 手当金(概算) | 住民税(月) | 掛金 | 手取り目安 |
|---|---|---|---|---|
| 育休1〜6ヶ月目 | 約22.8万円 | 約1.5万円 | 免除 | 約21.3万円 |
| 育休7〜12ヶ月目 | 約17.0万円 | 約1.5万円 | 免除 | 約15.5万円 |
年収別×育休期間別の手取り年額マトリクス(概算)
産休期間の給与は別計上。下表は育休期間中の手当金収入の合計(住民税控除後の概算)。
| 育休1年 | 育休1.5年 | 育休2年 | 育休3年 | |
|---|---|---|---|---|
| 年収400万円 | 約190万円 | 約240万円 | 約260万円 | 約260万円 |
| 年収500万円 | 約230万円 | 約290万円 | 約314万円 | 約314万円 |
| 年収600万円 | 約278万円 | 約350万円 | 約380万円 | 約380万円 |
※育休3年は2歳以降の手当金がゼロのため、2年と同値になる。 ※住民税は育休2年目以降に大幅減少する(前年=育休中の低収入ベースになるため)。 ※上記は概算値。ボーナス削減分は含まない。
育休を2年に延ばしても、手当金が増えるわけではない(50%が続くだけ)。 ただし2年目以降は住民税が下がるため、「手当金が同じでも手取りは少し上がる」という効果はある。
育休3年(無給期間)を選ぶ場合、3年目は手当金がゼロになる点を必ず織り込んでほしい。
第5章:時系列タイムライン——妊娠判明から復職まで「いつ何が変わるか」
「制度は分かった。でもいつどう変わるかが分からない」という人向けに、手取りの変化を時系列で整理した。
妊娠判明
├ 管理職に報告・産休開始日を逆算
└ 産前8週前から「産前休暇スタート」
→ 給与: 満額継続
→ 手取り変化: ほぼなし
出産
├ 産後8週(56日)は産後休暇
│ → 給与: 満額継続
└ 共済組合へ出産費+附加金(55万円)の請求
育休開始(産後57日目〜)
├ 共済掛金: 免除開始 ← 手取りの下支えになる
├ 手当金: 67%スタート
└ 手取り目安: 約21万円/月(年収500万モデル)
育休180日目
├ 手当金: 50%に切り替え ← 最大の節目
└ 手取り目安: 約15.5万円/月(年収500万モデル)
→ 住民税徴収と重なると家計が最もタイト
子が1歳(育休1年目)
├ 保育所入所できた → 復職
└ 保育所入所できなかった場合 → 延長申請(不承諾通知が必要)
子が1歳6ヶ月・2歳
├ 手当金: 50%のまま継続
├ 住民税: 育休2年目から前年(手当金収入)ベースに切り替わり大幅減
└ 延長できるのは2歳まで(手当金あり)
子が2歳以降(育休3年目)
└ 手当金: ゼロ(無給育休)
復職
├ 共済掛金: 再開(手取りが下がる一因)
├ 所得税: 給与から再度源泉徴収
└ 住民税: 翌年度から復帰後収入ベースに上昇
住民税の2年間の推移パターン
| 時期 | 住民税の計算ベース | 月々の目安 |
|---|---|---|
| 育休1年目 | 前年(在職時)収入 | 月1.3〜1.7万円(高め) |
| 育休2年目以降 | 前年(手当金)収入 | 月0.2〜0.5万円(大幅減) |
| 復帰後1年目 | 育休中の低収入ベース | まだ低め |
| 復帰後2年目〜 | 復帰後の給与収入 | 徐々に上昇 |
育休2年目に住民税が大幅に下がることを知っておくと、延長するかどうかの家計判断の材料になる。
第6章:ボーナス(期末手当・勤勉手当)への影響
ボーナスの詳細は教員の産休ボーナスはいくら?に譲るが、手取り全体の文脈で押さえておくべきポイントを整理する。
産休中のボーナス
産休期間は「勤務したものとみなす」ため、期末手当・勤勉手当ともに除算対象外。 基準日(6月1日・12月1日)に在籍していれば、産休前の在職期間分がそのまま使われる。 産休中のボーナスは手取りベースでほぼ産休前と変わらない、と見ていい。
なお産休・育休中のボーナスには共済掛金が課されないため、通常より手取り率が高くなる。
育休中のボーナス
| 手当の種類 | 育休中の扱い | 影響度 |
|---|---|---|
| 期末手当 | 育休期間を1/2除算 | 中程度の減額 |
| 勤勉手当 | 育休期間を全額除算 | 大幅減額(全育休期間なら支給ゼロも) |
育休1年間で試算すると、ボーナスは年収500万円モデルで年間30〜50万円程度の減額になるケースが多い。 マトリクス表の「手取り年額」にはボーナスを含んでいないため、ボーナス削減分は別途見込んでほしい。
育休中のNISA積立はどうするか、という疑問は教員のNISA完全ガイドを参照してほしい。 育休中の積立継続・一時減額の考え方をまとめてある。
第7章:育休延長(1歳→1.5歳→2歳)の手取り変化
延長の条件と申請
育休を1歳以降に延長するには「保育所に入れなかった」という証明が必要だ。 具体的には、市区町村から発行される「保育所不承諾通知」を共済組合に提出する。
延長は1歳半と2歳でそれぞれ申請が必要で、2回手続きが発生する。 手続きを忘れると手当金の支給が止まることもあるため、共済組合の担当者に確認しておくこと。
延長パターン別の手取り比較(年収500万モデル)
| パターン | 期間 | 月手取り目安 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 1歳で復帰 | — | — | ボーナスも早めに回復 |
| 1歳半まで延長 | 子1歳〜1.5歳 | 約15.5万円/月 | 50%が継続、不承諾通知必要 |
| 2歳まで延長 | 子1歳半〜2歳 | 約15.5万円/月 | 50%が継続、再度不承諾通知必要 |
| 2歳以降(無給延長) | 子2歳〜3歳 | 住民税のみ支出 | 手当金ゼロ、実質無収入 |
延長しても手当金の支給率は50%から上がらない。 「もう少し手元にお金が欲しいから延長する」という判断は成立しない点は正直に伝えておく。
一方で、育休2年目以降は住民税が大幅に下がる。 「手当金は同じ50%でも、住民税が下がる分だけ手取りが少し増える」という恩恵はある。
2歳以降の無給期間(育休3年目)は手当金がゼロになる。 配偶者の収入や貯蓄で生活費を賄えるかどうか、事前にシミュレーションしておく必要がある。
第8章:公立 vs 私立——制度の違いと手取りへの影響
競合記事のほとんどが公立教員のみを対象にしている。 私立教員(私学共済)との違いはここで整理しておく。
公立教員(公立学校共済組合)の制度
公立教員の産休中の給与は、地方公務員の「特別休暇(有給)」として全額支給される。 これは法律・条例で定められており、学校側の裁量で変更できない。
育休中は公立学校共済組合から育休手当金(67%/50%)が支給される。 申請先はハローワークではなく共済組合。 書類の様式・提出先は自治体ごとに多少異なるため、産休前に学校事務担当者に確認しておくと安心だ。
参考: 公立学校共済組合「育児休業手当金」 参考: 公立学校共済組合「育児休業支援手当金」(2026年4月新設の上乗せ制度)
私立教員(私学共済)の産休制度
私立学校の教員の扱いは、学校法人ごとの就業規則によって変わる。
産休中の給与が「無給」になる法人では、健康保険から出産手当金が支給される。 計算式は次の通りだ。
出産手当金(日額) = 標準報酬月額 ÷ 30 × 2/3
支給期間 = 産前42日 + 産後56日 = 98日
標準報酬月額が30万円の場合、日額は約6,667円。 98日分で合計約65万円が支給される。
一方、私学共済に加入している法人では「出産手当金ではなく産休中も給与継続」という扱いになるケースもある。 自分の学校がどちらに該当するかは、就業規則または学校の人事担当者に確認が必要だ。
参考: 私学事業団「出産手当金」 参考: 私学事業団「出産・育児にかかる掛金等免除」
公立 vs 私立 比較表
| 公立教員 | 私立教員(私学共済) | |
|---|---|---|
| 産休中の給付 | 通常給与(満額) | 法人規定 or 出産手当金(2/3) |
| 産休中の課税 | 課税 | 出産手当金は非課税 |
| 産休中の手取り目安(年収500万) | 約25.5万円/月 | 約18〜22万円/月(法人差あり) |
| 育休中の給付 | 育休手当金 67%/50% | 育休手当金 67%/50% |
| 育休中の課税 | 非課税 | 非課税 |
| 申請先(育休) | 公立学校共済組合 | 私学事業団 |
| 雇用保険 | 非加入 | 加入(学法によって差あり) |
最大の違いは産休中の手取りだ。 公立が給与満額なのに対し、私立で無給の場合は出産手当金の2/3相当になる。 年収500万円モデルで月5〜7万円程度の差になることがある。
第9章:復職前後の家計設計——手取りはいつ「元に戻る」か
復職直後の「手取りが低い」3つの理由
育休から復帰した直後、手取りが産休前より低いと感じる先生が多い。 理由は3つある。
1. 時短勤務による按分
時短勤務を選ぶ場合、勤務時間の比率で給与が按分される。 フルタイム7時間45分のところを5時間勤務にした場合、給与はおよそ64%前後になる。 育休中の手取りより下がるケースもある点は、事前に計算しておいてほしい。
2. 共済掛金が復職月から再開
育休中は免除されていた掛金が、復帰した月から再度天引きされ始める。 月4〜5万円(年収500万モデル)が再び引かれることになる。
3. 住民税が翌年度から上昇
復帰後1年目の住民税は育休中の低収入ベースで低め。 ただし翌年度から復帰後の給与収入ベースに切り替わるため、手取りが一時的にさらに下がることがある。 この「住民税の遅延増加」は意外と盲点になりやすい。
「手取りが産休前に戻る」目安のタイムライン
| 復帰パターン | 手取り回復の目安 |
|---|---|
| フルタイム復帰 | 復帰後6〜12ヶ月で概ね回復 |
| 時短勤務継続 | フルタイムに切り替えるまで低い状態が続く |
時短勤務から戻るタイミングが「手取り回復」の実質的な起点になる。
復帰前にやっておくべき家計チェック3点
- 保育費の月額確認 — 保育料の上限は世帯収入によって決まる。復帰後の手取りから差し引くと生活費がいくら残るか試算しておく
- 時短勤務期間の手取り試算 — 時短を何年取るかによって総収入が大きく変わる。フルタイム復帰との比較を数字で出しておく
- 住民税増加タイミングの把握 — 復帰後2年目の住民税上昇を見越して、1年目は余裕をもった家計設計にする
復帰後の家計設計をFPに相談する
復帰後は手取りの変化・保育費・住宅ローン・NISA再設定など、同時に動く項目が多い。 一度プロに整理してもらうと、自分で試算するより1〜2時間の節約になる。
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第10章:著者実体験コラム——同僚から見た産休・育休のリアル
元小学校教員として働いていたとき、産休・育休を取った同僚の話を間近で聞いていた。
一番記憶に残っているのは、育休7ヶ月目に急に家計が苦しくなったという同僚の話だ。
制度は「67%→50%に切り替わる」と事前に聞いていたそうだが、住民税が同時期に引き続き取られることまでは頭になかったと言っていた。 「手当金が67%だったときに住民税を引いた金額を基準に生活費を組んでいたら、50%に切り替わった月に一気に5万円以上の落差が来た」という話だった。
もう一人、産休前に一度だけ手取りシミュレーションをやってみたという先生がいた。 その先生は「数字を出してみたら、思ったより手元に残ることが分かって安心した。準備も早くできた」と話していた。
対照的な2人だったが、共通していたのは「事前に知っているかどうかで心理的な余裕が全然違う」ということだ。
制度を調べるのは産休に入ってからでも遅くはないが、妊娠判明直後に一度シミュレーションしておくのが現実的だと思っている。
また、手続き面で苦労した先生が多かったのも事実だ。 「書類を何枚出したか分からなくなった」という声が複数あった。 共済組合への請求書類は産休から育休の間に何枚も出す。 学校の事務担当者と早い段階でコミュニケーションを取っておくと、確実に楽になる。
「制度を使うことは権利だ。引き継ぎさえ丁寧にやれば、安心して休んでいい」——というのが、周囲を見てきた正直な感想だ。
よくある質問
Q1. 教員の産休中は手取りが減りますか?
公立教員の産前産後休暇(産休)中は、給与が満額支給されます。 手取りが減るのは、共済掛金・所得税・住民税の天引きが産休前と同じ計算で続くためです。 ただし支給額自体はゼロにはならず、手取りも産休前とほぼ同じ水準が維持されます。 年収500万円モデルで産休中の手取り目安は約25万円/月です。 手取りが大きく変わるのは、育休に移行してからです。
Q2. 育休中の「手取り」はどうやって計算するのですか?
育休中の手取り=育休手当金(非課税)-住民税(前年所得ベース)で計算します。 育休中は共済掛金が免除されるため、手当金から引き算する必要がありません。 所得税も手当金が非課税のためゼロです。 年収500万円モデルの場合、育休前半(67%)の手取り目安は約21万円/月、後半(50%)は約15.5万円/月です。
Q3. 住民税は育休中も払い続けるのですか?
はい、払い続けます。 住民税は前年所得をもとに計算されるため、育休中も前年度(在職時)の収入に基づいた住民税が課税されます。 育休中は給与天引きができないため、多くの自治体で普通徴収(振込書が届く方式)に切り替わります。 年収500万円の場合、育休1年目の住民税は年間15〜20万円が目安です。 振込書が突然届いて驚かないよう、産休中に現金を確保しておくことを勧めます。
Q4. 公立教員と私立教員では産休中の手取りはどちらが多いですか?
原則として公立教員のほうが産休中の手取りは多くなります。 公立教員は産休中も給与が満額支給されますが、私立教員は学校法人の規定によって産休中が無給になることがあり、その場合は出産手当金(標準報酬月額÷30×2/3)が支給されます。 出産手当金は産休中の給与より低くなるケースが大半です。 ただし私立でも私学共済加入法人では、産休中の待遇が公立に近いケースもあります。 自分の学校の扱いは、就業規則または人事担当者への確認が必要です。
Q5. 育休中に共済掛金は取られますか?
取られません。 育休開始月から育休終了翌月の前月まで、共済掛金(健康保険・年金相当)が全額免除されます。 免除期間も年金算定には「保険料を納めた期間」として扱われるため、将来の年金額が減ることはありません。 この免除は育休承認と連動して自動処理される自治体が多いですが、手続きが必要なケースもあるため、産休前に所属の共済組合に確認しておくことをお勧めします。
Q6. 育休を1年半に延ばすと手取りはどう変わりますか?
延長期間(子1歳〜1歳半)の手当金は50%が継続します。 支給率が上がることはありません。 年収500万円モデルの場合、1歳以降も月手取り目安は約15.5万円/月が続きます。 一方、育休2年目から住民税が育休中の低収入ベースに切り替わるため、月々の住民税負担が大幅に下がります。 延長する場合は保育所不承諾通知が必要で、1歳半と2歳でそれぞれ手続きが発生します。
Q7. ボーナスは産休・育休中にもらえますか?
産休中は基本的にほぼ満額に近い水準で支給されます。 産前産後休暇は「勤務したものとみなす」ため、ボーナス算定上の除算対象になりません。 育休中は期末手当が育休期間の1/2除算・勤勉手当が全除算のため大幅に減額されます。 育休1年以上になると、冬のボーナスは期末手当のごくわずかな額のみになるケースもあります。 詳細な計算例は教員の産休ボーナスはいくら?を参照してください。
Q8. 復職後に手取りが産休前の水準に戻るのはいつ頃ですか?
フルタイム復帰の場合、復帰後6〜12ヶ月で概ね回復します。 ただし復帰直後は共済掛金再開・時短勤務按分(時短選択の場合)・住民税の翌年度増加が重なるため、産休前より手取りが低い時期が続くことがあります。 時短勤務を続けている間は、フルタイムに切り替えるまで手取りが抑えられた状態が継続します。 「いつ元に戻るか」の具体的な試算は、復職前に一度シミュレーションしておくことを勧めます。
まとめ——手取りを把握するための3ステップ
産休・育休中の手取りを正確に把握するには、3つのステップで考えると整理しやすい。
ステップ1: 産休中は「産休前と同じ手取り計算」をする
共済掛金・所得税・住民税が通常どおり引かれる。 手取りは産休前とほぼ変わらない。 産休中の手取りを計算して、「育休に入ったらこの金額がどう変わるか」のベースラインを把握する。
ステップ2: 育休開始後は「手当金から住民税だけを引いた額」が手元に来る
掛金は免除、所得税はゼロ。 引かれるのは住民税のみ(前年収入ベース)。 67%フェーズで月いくら、50%フェーズで月いくら、という2段階の試算を産休前にやっておくと、7ヶ月目の落差に慌てずに済む。
ステップ3: 育休7ヶ月目前後を「最大の谷」として家計設計する
50%への切り替えと住民税が重なる時期が家計的に最もキツい。 この時期に向けて現金を別口座に積んでおくことが、育休を安心して過ごすための最短ルートだ。
産休・育休のお金全体の制度解説と申請手続きは、ピラー記事の教員の産休・育休お金ガイドにまとめてある。 この記事と合わせて読むと、制度理解と実額シミュレーションの両方が揃う。
育休復帰前の準備チェックリストは教員の育休復帰準備チェックリストを参照してほしい。
