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免責事項: 本記事の手取りシミュレーションはあくまで目安です。 実際の税負担・社会保険料は年収・家族構成・各種控除によって大きく異なります。 正確な手取り額は給与明細・市町村税額通知で確認し、疑問点はFP・所属自治体の給与担当にご相談ください。 制度情報は2025年6月成立・2026年施行時点のものです。最新情報は文科省・各教育委員会の公式発表を必ずご確認ください。
「給与が上がる」と聞いて、素直に喜べるかどうか。
2025年6月12日、改正給特法が成立した。 教職調整額が現行の4%から最終的に10%まで引き上げられるというニュースは、SNSでも話題になった。
でも元教員の自分が最初に思ったのは、「で、実際に手取りいくら増えるの?」という疑問と、「これで本当に働き方は変わるのか?」という率直な問いだった。
制度の概要を伝えるメディア記事はたくさんある。 ただ「年収〇〇万円の自分が、いつからいくら増えるか」を計算できる記事が驚くほど少ない。
この記事では、改正内容の正確な整理・年収別の手取りシミュレーション・段階実施ロードマップ・現場目線での批判的論点・増えた給与の賢い使い道まで、一本で全部揃えた。 転職を迷っている人も、増えた収入を投資に回したい人も、全員に役立つように書いている。
目次
- 改正給特法の全体像——5分で分かる「何が変わるか」
- そもそも給特法とは——50年前の法律がなぜ問題になったか
- 年収別 手取りシミュレーション(20代〜50代)
- 段階実施ロードマップ——2026〜2031年の引き上げスケジュール
- 改正のデメリット・批判的論点(元教員の率直な視点)
- 増えた給与の使い道——元教員が勧める3パターン
- 給与が上がっても辞めたい人へ——転職を選ぶ判断基準
- 育休中・産休中の教員への影響
- 業務量管理計画とは——2026年4月からの新ルール
- 節税・税負担への影響
- よくある質問(FAQ)
- まとめ・次に読む記事
1. 改正給特法の全体像——5分で分かる「何が変わるか」
2025年6月12日、「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法等の一部を改正する法律」が参議院本会議で可決・成立した(文部科学省、2025年6月)。 公布日は2025年6月18日。
改正の内容は大きく五本柱に整理できる。
柱1: 教職調整額の段階的引き上げ
現行の給料月額4%から、最終的に10%まで引き上げる。 施行は2026年1月1日から。 毎年1%ずつ引き上げ、2031年1月に10%到達という設計。
1972年に給特法が施行されて以来、約50年ぶりの増額改定だ。
柱2: 業務量管理・健康確保措置実施計画の公表義務化
各教育委員会が「業務量管理・健康確保措置実施計画」を策定し、公表することが義務付けられた。 施行は2026年4月1日から。
これまで「頑張れ」だった業務管理が、法的義務になった点は前進と言える。 ただし、計画の中身の実効性については後述する。
柱3: 在校等時間の削減目標の法定化
改正法の附則で、2029年度末までに教員の時間外在校等時間の月平均を「30時間程度」にする目標が明記された。
現行の指針では月45時間・年360時間が上限とされているが、あくまで努力目標に過ぎない。 民間の36協定のように超えた場合に企業・使用者が罰則を受けるしくみではなく、「目標」の性格を変えないまま附則に数値が盛り込まれた形だ。
柱4: 主務教諭の新設
教諭と主幹教諭の中間職として「主務教諭」を新たに創設する。 校務の総合的な調整役を担う職で、教諭より月額6,000円程度の処遇上乗せが想定されている(詳細は各自治体の条例・選考基準による)。
2026年度から順次、各自治体で選考・任用が始まる見込みだ。
柱5: 学級担任手当の新設・35人学級の拡大
学級担任手当の加算: 義務教育等教員特別手当を校務類型別に再編し、学級担任を受け持つ教員に月額3,000円程度の加算が想定されている。
公立中学校35人学級: 2026年度(中学1年生)から順次導入し、2028年度に中学3年生まで拡大。 全学年で35人学級が完成することで、教員1人あたりの担当生徒数が減り、授業準備・生活指導の負担軽減が期待される。
改正のポイントを一覧で確認:
| 項目 | 現行 | 改正後 |
|---|---|---|
| 教職調整額 | 給料月額の4% | 2026年〜段階的に引き上げ、2031年に10% |
| 業務量管理計画 | 任意 | 教育委員会に策定・公表を義務化(2026年4月〜) |
| 在校等時間の目標 | 指針で月45時間・年360時間(努力目標) | 附則で2029年度末までに月平均30時間を明記 |
| 主務教諭 | なし | 2026年度〜新設(月額+6,000円程度想定) |
| 学級担任手当 | なし(義務教育等教員特別手当を一律支給) | 担任加算 月額+3,000円程度想定 |
| 公立中学校学級編制 | 40人学級が標準 | 2026年度〜順次35人学級へ移行 |
| 残業代 | 不支給(給特法の原則) | 変更なし |
残業代が出ない構造は変わっていない。 この点は非常に重要で、後の章でしっかり掘り下げる。
2. そもそも給特法とは——50年前の法律がなぜ問題になったか
「給特法」という名前は知っていても、その成り立ちを知っている教員は少ない。 なぜ教員だけが残業代ゼロなのか、歴史から整理する。
1971年制定・1972年施行の経緯
正式名称は「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」。 1971年に制定、1972年1月に施行された。
制定の背景には、1960年代に文部省(当時)が行った教員勤務状況調査がある。 その調査結果をもとに「教員の超過勤務時間は月約8時間」と算出し、その8時間分を給料月額の4%相当として「教職調整額」を支給する代わりに、残業代は支払わないというルールが作られた。
つまり——教職調整額の4%という数字は、1966年頃の調査データが根拠だ。 それから60年近くが経過しても、率は変わっていなかった。
「定額働かせ放題」と呼ばれる構造
現在の教員の残業実態は、1966年の「月8時間」とは桁違いだ。
文部科学省の「教員勤務実態調査」では、小学校教員の6割超が月45時間を超える時間外在校等時間を記録している。 それでも残業代は一切支払われず、教職調整額の月数千円で「全部込み」とされてきた。
これが「定額働かせ放題」と批判されてきた理由だ。
過労死・精神疾患の増加
文科省の「教育職員に係る懲戒処分等の状況」や共済組合の統計を見ると、精神疾患による休職者数は年々増加している。 教員の過重労働が深刻な健康被害を生んでいる現実は、改正給特法が議論された背景のひとつでもある。
ただし——残念ながら今回の改正は、この構造の「根本」を変えるものではない。
3. 年収別 手取りシミュレーション(20代〜50代)
「自分はいくら増えるのか」。 これが一番気になるところだと思う。
以下のシミュレーションは、次の前提で計算している。
計算前提:
- 教職調整額 = 給料月額 × 率(現行4%、2026年1月から5%)
- 「給料月額」は諸手当を含まない本給(基本給)ベース
- 給料月額の目安: 年収の約40〜42%を12で割った額(地域手当・住居手当・期末勤勉手当を除いた概算)
- 税・社会保険の手取り影響: 増額分の約20〜25%が税・社会保険で引かれる想定(給与所得控除・社会保険料は年収帯で変動)
- 個人の家族構成・各種控除・自治体の地域手当有無によって実際の手取りは変わる
数値はあくまで目安。正確な額は給与明細・勤務先の給与担当に確認すること。
2026年1月施行時点(4% → 5%、増加分: 1%)
| 年収帯 | 給料月額(目安) | 現行調整額(月) | 2026年調整額(月) | 月の増額 | 年の増額 | 手取り増額(年・概算) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 400万円 | 約140,000円 | 5,600円 | 7,000円 | +1,400円 | +16,800円 | 約12,000〜13,000円 |
| 500万円 | 約175,000円 | 7,000円 | 8,750円 | +1,750円 | +21,000円 | 約15,000〜16,000円 |
| 600万円 | 約210,000円 | 8,400円 | 10,500円 | +2,100円 | +25,200円 | 約18,000〜20,000円 |
| 700万円 | 約245,000円 | 9,800円 | 12,250円 | +2,450円 | +29,400円 | 約21,000〜23,000円 |
給料月額は実際の基本給と乖離する場合があります。自分の給与明細の「給料月額」欄の数字を使って計算してください。
2028年1月時点(中間年: 4% → 7%、増加分: 3%)
段階引き上げの中間点として、2028年時点の数値も確認しておこう。
| 年収帯 | 給料月額(目安) | 現行調整額(月) | 2028年調整額(月) | 月の増額 | 年の増額 | 手取り増額(年・概算) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 400万円 | 約140,000円 | 5,600円 | 9,800円 | +4,200円 | +50,400円 | 約37,000〜40,000円 |
| 500万円 | 約175,000円 | 7,000円 | 12,250円 | +5,250円 | +63,000円 | 約46,000〜50,000円 |
| 600万円 | 約210,000円 | 8,400円 | 14,700円 | +6,300円 | +75,600円 | 約55,000〜60,000円 |
| 700万円 | 約245,000円 | 9,800円 | 17,150円 | +7,350円 | +88,200円 | 約64,000〜70,000円 |
2031年1月到達時点(4% → 10%、増加分: 6%)
10%が最終到達点。2026年からの5年間で段階的に積み上がった結果がこの額だ。
| 年収帯 | 給料月額(目安) | 現行調整額(月) | 10%到達後(月) | 月の増額 | 年の増額 | 手取り増額(年・概算) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 400万円 | 約140,000円 | 5,600円 | 14,000円 | +8,400円 | +100,800円 | 約73,000〜80,000円 |
| 500万円 | 約175,000円 | 7,000円 | 17,500円 | +10,500円 | +126,000円 | 約91,000〜100,000円 |
| 600万円 | 約210,000円 | 8,400円 | 21,000円 | +12,600円 | +151,200円 | 約109,000〜120,000円 |
| 700万円 | 約245,000円 | 9,800円 | 24,500円 | +14,700円 | +176,400円 | 約127,000〜141,000円 |
自分で計算する方法
給与明細を手元に用意して、以下の手順で計算できる。
Step1: 給与明細の「給料月額(基本給)」を確認する Step2: その金額 × 0.01 = 1%分の増額(月) Step3: 2026年は1%増、2027年は2%増……と、その時点の増加率を掛ける Step4: 年額 = 月額 × 12 Step5: 手取り = 年額 × 0.75〜0.80程度(所得税・住民税・社会保険料の概算控除後)
具体的な例: 給料月額18万円の教員の場合
- 1%増 = 月1,800円増 → 年21,600円増 → 手取り約16,000〜17,000円増(2026年)
- 3%増 = 月5,400円増 → 年64,800円増 → 手取り約48,000〜52,000円増(2028年)
- 6%増 = 月10,800円増 → 年129,600円増 → 手取り約96,000〜104,000円増(2031年)
期末手当・勤勉手当(ボーナス)への影響は?
これは「影響しない」と書かれた記事も多いが、実態は自治体によって異なるため注意が必要だ。
東京都をはじめ多くの自治体の給与規程では、期末手当・勤勉手当の算定基礎となる「給与の月額」を次のように定義している。
給与の月額 = 給料月額 + 給料の調整額 + 教職調整額
つまり——教職調整額はボーナスの計算基礎に算入されるのが標準的な扱いだ。 教職調整額が上がれば、期末手当・勤勉手当の計算基礎も上がるため、ボーナスにも正の影響が出る可能性が高い。
ただし自治体の条例・規則によって取り扱いが異なる場合があるため、詳細は所属自治体の給与担当に必ず確認すること。
4. 段階実施ロードマップ——2026〜2031年の引き上げスケジュール
「2026年から10%になる」と誤解している教員が多い。 実際は毎年1%ずつ引き上げる段階実施で、10%到達は2031年1月だ。
年度別引き上げスケジュール
| 施行日 | 教職調整額の率 | 現行(4%)からの増加分 |
|---|---|---|
| 2025年まで(現行) | 4% | — |
| 2026年1月1日 | 5% | +1% |
| 2027年1月1日 | 6% | +2% |
| 2028年1月1日 | 7% | +3% |
| 2029年1月1日 | 8% | +4% |
| 2030年1月1日 | 9% | +5% |
| 2031年1月1日 | 10% | +6% |
出典: 改正給特法(2025年6月12日成立)。施行スケジュールは改正法の条文に基づく。今後の政省令・通知によって詳細が変更となる可能性があるため、文科省の最新情報を確認してください。
「2026年4月」ではなく「2026年1月」から
ひとつ注意してほしいのは、教職調整額の引き上げが1月施行という点だ。 学校現場の感覚で「4月から」と思い込む人も多いが、給与への反映は1月から。 年度途中の給与アップになる。
一方、業務量管理計画の公表義務化は2026年4月1日施行なので、混同しないようにしたい。
5. 改正のデメリット・批判的論点(元教員の率直な視点)
「賃上げは良いことだ」で終わらせたくない。 メディアが詳しく書かない批判的論点を、元教員の視点から率直に書く。
批判1: 残業代ゼロの構造は変わっていない
今回の改正で最も重要な事実は、残業代が支払われない給特法の基本構造は変わっていないという点だ。
教職調整額を10%に上げても、超過勤務が月100時間であっても月20時間であっても、もらえる額は「給料月額×10%」で同じ。 残業した分だけ支払われる「残業代」ではない。
「月100時間残業している教員の月の残業代相当」を民間の時間給で計算すると、教職調整額とは比べ物にならない額になる。 10%への引き上げはたしかに前進だが、それでも「定額働かせ放題」という構造の本質は変わっていない。
批判2: 長時間労働の「固定化」につながる懸念
日本弁護士連合会は改正にあたり、「調整額の引き上げは、むしろ長時間労働を追認し、固定化させる危険性がある」との見解を示している。
論理はシンプルだ。 給与を上げることで「それなりの額をもらっているから長時間働いてもいい」という職場文化・管理職の意識につながるリスクがある。 増額がガス抜きに終わり、残業削減の本質的な取り組みが後回しになる、という懸念だ。
元教員として言えば——この懸念は完全に的外れではないと思っている。 「お金が増えたんだから頑張れ」という空気が生まれやすい現場の文化を、自分は知っている。
批判3: 業務量管理計画の実効性への疑問
2026年4月から各教育委員会が策定・公表する「業務量管理計画」。 制度としては前進だが、計画を作って公表するだけで現場の業務量が自動的に減るわけではない。
現場では今も「在校等時間のデータ入力を早退前に終わらせる」という本末転倒な光景がある。 上司からのプレッシャーによって実態と異なる時間が報告されているケースは、現場を知る人なら想像に難くない。
計画の「数字」と「現実」の乖離をどう埋めるか——そこに制度の実効性がかかっている。
批判4: 主務教諭創設による格差への懸念
今回の改正で新設される「主務教諭」は、月額6,000円程度の上乗せが想定されている。 「一部の教員だけが選考で優遇される」「教員間の分断・格差が生まれる」という批判も上がっている。
また、学級担任加算(月額+3,000円程度)についても「担任を持たない教員との不公平感」を指摘する声がある。
職種・役割によって処遇を分けること自体は合理的な考え方だが、選考基準の透明性・公正さが保たれなければ、職場の人間関係に悪影響を及ぼしかねない。
元教員として率直に言うと
給与が上がることは、もちろん嬉しい。 自分が現役だったとき、手取りの薄さは正直きつかった。
ただ「給与を上げれば教員が増え、職場環境が改善される」という単純な話ではないことも知っている。
現場の業務量が変わらないまま給与だけ上がれば、「それだけもらっているんだから」という外からの圧力も増える。 給与改善と並行して、業務量の実態に基づく削減——何をやめるか、どのタスクを学校から切り出すか——という議論が必要不可欠だ。
この記事を読んでいる現役教員には、給与の数字だけでなく、自分の働き方全体を見直す材料にしてほしいと思っている。
6. 増えた給与の使い道——元教員が勧める3パターン
「2026年1月から月1,000〜2,500円増える(年収帯による)」というのは、少ないようで積み重ねると大きい。 どう使うかで10年後の資産は変わる。
パターン1: NISA積立の増額
増えた分をそのままNISAの積立に回す方法。 月1,500円の積立増額でも、20年間で複利効果がのると無視できない額になる。
教員はiDeCoに比べてNISAを使える柔軟性が高く、いつでも出金できるため使い勝手がいい。 まずはNISAの基本から整理したい人は下記へ。
パターン2: iDeCo拠出の上限活用
公立学校の教員(地方公務員共済加入)のiDeCo掛金上限は月12,000円。 給与増の分をiDeCoに回せば、掛金が全額所得控除になるため節税効果もついてくる。
「給与が増えて税負担も増える」という状況を、iDeCoで相殺する発想は合理的だ。
パターン3: 住宅ローンの繰上げ返済・家計の防衛
住宅ローンを抱えている教員は、繰上げ返済の原資にする方法も有力だ。 繰上げ返済の効果は、ローン残高・金利・残年数によって大きく変わる。 自分の住宅ローン状況の整理から始めたい人は下記へ。
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「NISAとiDeCoどっちを優先すべきか」「住宅ローン繰上げと投資どちらが得か」——これは個人の状況によって答えが変わる。 無料でFPに相談できるサービスを使うのが、最短ルートだ。
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7. 給与が上がっても辞めたい人へ——転職を選ぶ判断基準
「給与が上がるなら続けよう」と思う人がいる一方で、「それでも辞めたい」と感じている人も多い。 どちらも正直な感覚だと思う。
給与改善後でも転職を検討すべきパターン
- 精神的・身体的な健康に限界がきている
- 2031年まで今の職場環境で5年間続けられるイメージが持てない
- 給与より「時間」や「やりがい」を取り戻したい
- 教員以外のキャリアに明確な目標が生まれた
給与が上がることと、職場環境が改善することは別の話だ。 「給与が上がったのに辞めるなんて」という空気に引っ張られて判断を誤らないよう、自分の状態を正直に棚卸しすることが先決。
転職の判断基準・退職金シミュレーション・エージェントの選び方は、別記事で詳しく整理している。
8. 育休中・産休中の教員への影響
産休・育休中の教員にとって「給与が上がった」といっても、自分にはいつ、どう関係するのか分かりにくい。 整理する。
育休中の給付金(育児休業手当金)への影響
公立学校教員の育児休業中の給付は、共済組合から支給される「育児休業手当金」だ。 この手当金は「育休開始直前の標準報酬月額」をベースに計算される。
つまり——育休に入る前の給与(教職調整額を含む月収)が高いほど、育児休業手当金の額も高くなる。 改正で教職調整額が上がったタイミングで育休に入れば、その分給付金の計算基礎が上がる可能性がある。
育休復帰後の標準報酬月額の見直し
育休から復帰した後、実際に受け取った報酬をもとに標準報酬月額が見直される。 復帰後3ヶ月間の報酬平均で改定されるため、改正後の給与(教職調整額を含む)が反映された形で改定される。
ただし、詳細の取り扱いは共済組合・所属自治体によって異なる場合がある。 必ず所属の共済組合に確認するようにしてほしい。
産休・育休中のお金全般を整理したい人へ
育休中の給付金・配偶者との手当のもらい方・保育料の計算まで、一本で整理した記事がある。
9. 業務量管理計画とは——2026年4月からの新ルール
2026年4月1日から、各教育委員会に「業務量管理・健康確保措置実施計画」の策定と公表が法的に義務付けられた。
在校等時間の上限と2029年目標
改正法が設定した数値目標をあらためて整理しておく。
現行指針(2019年〜): 時間外在校等時間は月45時間・年360時間を上限とする(努力目標)。 民間の36協定とは異なり、超過しても使用者に法的ペナルティが発生しない性質のものだ。
改正法の附則: 2029年度末までに、教員の時間外在校等時間の月平均を「30時間程度」にする目標が明記された。
現状の平均から月45時間目標を達成できていない現場が多い中で、2029年に月30時間という目標が実現するかどうか——率直に言えば、制度の実行力次第だと思っている。
計画に盛り込まれる内容
- 教員の業務量を適切に管理するための目標
- 具体的な措置の内容・実施スケジュール
- 達成状況の定期的な公表
- 総合教育会議への報告
「ガイドラインを示すだけ」だったこれまでと違い、義務化されたことで各教育委員会は公の場に計画を開示しなければならなくなった。
公表されることでどんな変化が起きるか
理論上は、「計画を公表している以上、サボれない」という外部からの目が生まれる。 保護者・地域住民・メディアが計画と実態を比較しやすくなるため、形骸化を防ぐ一定の効果は期待できる。
一方で「計画を作ること」と「実際に業務量が減ること」はイコールではない。 計画の中身の水準が低ければ、公表しても意味は薄い。
現場から意見を上げる方法
業務量管理計画の策定プロセスで、現場の教員が意見を出せる仕組みが設けられている自治体もある。 教員組合・学校運営協議会(コミュニティ・スクール)などを通じて意見を届けることが、制度を形骸化させないための実質的な手段になる。
「待っていれば変わる」ではなく、声を届ける回路を使うことが重要だ。
ICTで業務時間を実際に削減する方法
制度が整っても、個人でできる業務効率化も並行して進めるのが現実的だ。 ICTツールを使った授業準備・採点効率化の具体的な方法は下記にまとめている。
10. 節税・税負担への影響
給与が増えれば、当然ながら所得税・住民税も増える。 「増えた分がそのまま手取りになる」わけではない点を正確に理解しておこう。
所得税・住民税の増加
教職調整額の増加分は「給与所得」として扱われるため、所得税・住民税の課税対象になる。 増額分の20〜25%程度が税・社会保険料として引かれる計算になる。
年収500万円帯で1%増(月1,750円・年21,000円増)の場合、手取りで残るのは年15,000〜16,000円程度という試算は、前章のシミュレーションで示した通りだ。
適切な節税で手取りを守る
給与増による税負担増を相殺するために有効な手段がいくつかある。
iDeCo: 掛金が全額所得控除。給与増→課税所得増をiDeCoで圧縮できる。 ふるさと納税: 住民税・所得税を実質的に節約。給与増で枠が広がるため見直しが必要。 NISA: 運用益が非課税。節税というより非課税運用の仕組み。
教員向けの節税対策を体系的に整理した記事は下記へ。
「増えた給与の使い道」と節税は一緒に考える
ふるさと納税の上限額は年収に連動して決まる。 給与増でふるさと納税の枠も広がるため、年初・年末のタイミングで枠を再計算するようにしよう。
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11. よくある質問(FAQ)
Q1. 給特法の改正はいつから実施されますか?
教職調整額の引き上げは2026年1月1日施行。 業務量管理計画の公表義務化は2026年4月1日施行。
教職調整額は2026年から毎年1%ずつ引き上げられ、2031年1月に最終的な10%に到達する。
Q2. 教職調整額が10%になるのはいつですか?
2031年1月。 2026年が5%スタートで、以降毎年1%増。2030年1月が9%、2031年1月が10%の到達となる。 「2026年から10%」という誤解が多いので要注意。
Q3. 給特法は廃止になったのですか?
廃止ではなく改正だ。 2025年6月12日に改正給特法が成立し、教職調整額の引き上げと業務量管理の義務化が盛り込まれたが、「残業代を支払わない」という給特法の基本構造は維持されている。
Q4. 年収500万の教員は改正後、手取りが年間いくら増えますか?
2026年1月時点(5%適用) で月約1,750円・年約21,000円の増額が見込まれる。 ただし所得税・住民税・社会保険料が引かれるため、実際の手取り増額は年約15,000〜16,000円程度になる。 家族構成・各種控除によって変動するため、正確な額は給与明細と市町村の税額通知で確認。
Q5. 給特法改正のデメリットは何ですか?
最大の問題点は「残業代ゼロの構造が維持されたまま給与だけ上げることで、長時間労働が固定化・追認されるリスクがある」という点だ。 日本弁護士連合会も同様の懸念を表明している。 業務量管理計画の実効性への疑問、現場の残業実態との乖離も批判として挙がっている。
Q6. 教育委員会の業務量管理計画とは何ですか?
2026年4月から各教育委員会が策定・公表を義務付けられた計画。 教員の業務量を適切に管理し健康を確保するための具体的な措置を記載する。 策定後は総合教育会議への報告と、毎年度の実施状況の公表も義務化されている。
Q7. 教職調整額の増加はボーナスに影響しますか?
多くの自治体では影響する。
東京都をはじめ多くの自治体の給与規程では、期末手当・勤勉手当の算定基礎となる「給与の月額」が「給料月額 + 給料の調整額 + 教職調整額」と定義されている。 教職調整額が上がれば計算基礎も上がるため、ボーナスへの正の影響が出る可能性が高い。
ただし自治体の条例・規則によって取り扱いが異なるため、詳細は所属自治体の給与担当に必ず確認すること。
Q8. 育休中の教員は復職後に給与増の恩恵を受けられますか?
育休から復帰した後、実際に受け取った報酬をもとに標準報酬月額が見直される。 復帰後3ヶ月間の報酬平均で改定されるため、改正後の給与が反映された形で改定される見込み。 詳細は所属の共済組合に確認することを強くすすめる。
→ 詳しくは教員向け産休・育休のお金完全ガイド
Q9. 主務教諭になると給与はいくら上がるのですか?
月額6,000円程度の上乗せが想定されている(2025年6月成立時点・各自治体の条例による)。
主務教諭は教諭と主幹教諭の中間職として2026年度に新設される。 校務の総合調整役を担い、選考を経て任用される仕組みだ。 選考基準・給与の詳細は各自治体の条例・規則によって異なるため、所属の教育委員会に確認すること。
Q10. 高校教員・特別支援学校教員も今回の改正の対象ですか?
改正給特法の直接の対象は「公立の義務教育諸学校等の教育職員」だ。
高校教員: 高等学校は義務教育段階ではないため、改正給特法の直接適用外となる。 ただし各都道府県が独自の条例・規則で同様の措置を講じるかどうかは、自治体の判断による。
特別支援学校教員: 設置者・学校の種別によって適用が異なる場合がある。 詳細は所属の自治体・教育委員会に確認すること。
12. まとめ・次に読む記事
改正給特法について、整理した内容をおさらいする。
今回の改正で変わること:
- 教職調整額: 4% → 2026年1月から毎年1%ずつ引き上げ → 2031年1月に10%到達
- 業務量管理計画の公表: 各教育委員会に義務化(2026年4月〜)
- 在校等時間の目標: 附則に「2029年度末に月平均30時間」を明記
- 主務教諭の新設: 2026年度〜(月額+6,000円程度)
- 学級担任手当の加算: 月額+3,000円程度(義務教育等教員特別手当の再編)
- 公立中学校35人学級: 2026年度(中1)〜2028年度(中3)で全学年完成
変わらないこと:
- 残業代ゼロの基本構造
手取りへの影響の目安:
- 2026年時点(年収500万帯): 年約15,000〜16,000円の手取り増
- 2028年時点(年収500万帯): 年約46,000〜50,000円の手取り増
- 2031年時点(年収500万帯): 年約91,000〜100,000円の手取り増
給与が上がることは前進だ。 ただし「上がるから現状維持でいい」という判断は、自分の働き方・キャリア・お金全体を棚卸しした上でしたい。
増えた給与をどう動かすか、転職を含めてキャリアをどう設計するか——ここに時間を使う価値がある。
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本記事の情報について 制度情報は2025年6月成立・2026年施行時点の情報を基にしています。 教職調整額の率・施行スケジュール・業務量管理計画の詳細は、今後の政省令・文科省通知によって変更となる可能性があります。 最新の正確な情報は文部科学省・各教育委員会の公式発表でご確認ください。 手取りシミュレーションは概算であり、個人の年収・家族構成・各種控除・地域手当によって実際の手取りは異なります。 投資・資産運用の判断は自己責任で行い、不安な場合はFP・税理士等の専門家にご相談ください。