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育休中のお金の話は情報が多い。 でも「復帰後、実際にいくら手元に残るのか」という話は、意外とどこにも書いていない。

育休給付金が止まる。 住民税の請求が来る。 社会保険料が復活する。 保育料が加わる。 時短をとれば給与が減る。

これが全部いっぺんに重なるのが、育休復帰後の1〜2ヶ月目だ。

復帰前に「月収はだいたい戻るだろう」と思っていたら、手取りが育休中より下がっていた——そういう話を同僚から聞いたとき、正直ショックだった。 この記事は、そういう「知らなかった」を減らすために書いている。

公立教員に特有の制度(共済組合・俸給表・育児短時間勤務)をベースに、復帰後の給与を具体的に掘り下げる。 育休中のお金の全体像は教員の産休・育休お金ガイド(親ピラー)で確認してほしい。


復帰後の給与、まず号俸の話から

公立教員の給与は、俸給表の「級」と「号俸」で決まる。 昇給は原則として毎年1月1日に行われ、勤務成績に応じて4号俸・8号俸・0号俸のいずれかが加算される。

育休中はこの昇給が止まる。 厳密には「休職等により勤務しない期間は昇給の対象期間に含まれない」という扱いになるため、1年間育休を取れば、その分だけ号俸の上昇が遅れる。

ただし、復帰した翌年1月からは通常の昇給ルートに戻る。 号俸が「リセット」されるわけではなく、あくまで「一時停止」だ。

育休前の号俸がそのまま据え置かれた状態で復帰するので、基本給自体は育休取得前と同額からのスタートになる。

号俸停止が退職金に与える影響

「昇給が止まると退職金も減るのでは?」という疑問はよく出てくる。

退職手当の計算式は「退職時の俸給月額 × 退職理由別・勤続年数別支給率」が基本だ。 育休期間自体は勤続年数に含まれるため、勤続年数が直接減るわけではない。

ただし号俸の上昇が遅れた分だけ、退職時点の俸給月額がやや低くなる可能性はある。 1年育休を取ることで退職金が数万円程度減る試算をする自治体もあるが、制度改正や昇給カーブによっても変わるため、長期育休を検討している場合は所属の共済担当窓口に試算を依頼してみるといい。


復帰月の手取りが思ったより少ない理由

ここが一番引っかかるポイントだ。

社会保険料が育休前の額に戻る

育休中は健康保険・厚生年金(公立教員は共済組合掛金)が全額免除されている。 復帰すると当然ながら控除が再開する。

ただし、時短勤務などで給与が育休前より下がっている場合でも、すぐには社会保険料の等級が下がらない。 「育児休業等終了時報酬月額変更届」を所属校(または教育委員会)が提出することで、復帰後3ヶ月の給与実績を使った等級の見直しが可能になる。 この手続きが行われないと、低くなった給与から高い掛金が引かれ続ける状態になる。

復帰後は必ず所属の事務担当者に「育短変更届は出ていますか?」と確認しておきたい。

公立学校共済組合の令和7年4月改定後の掛金率は健康保険・年金を合わせておよそ14〜16%程度(所属組合・所得区分による)。 月給28万円なら単純計算で約4万〜4.5万円が毎月引かれる計算になる。

住民税の請求タイミング

住民税は前年度の所得に対して課税される。 育休前の給与が課税ベースになっているため、復帰後も一定額の住民税が天引きされる。

育休中に特別徴収(給与天引き)を継続していた場合は問題ない。 ただし途中で普通徴収(自分で納付)に切り替えていた場合、復帰後に「追納」が発生するケースがある。 総務の担当者への確認を復帰前にしておくと安心だ。

住民税は「所得割+均等割」で構成され、前年の給与所得が多いほど金額が上がる。 育休前にフルタイムで働いていた年の課税が残っているため、復帰直後の月は特に手取りが圧迫されやすい。

復帰月の手取りシミュレーション(イメージ)

育休前の月給が28万円(税込)、復帰後も同額、時短なしで復帰したケースで考える。

項目 金額(目安)
基本給 280,000円
共済掛金(健康保険+年金) ▲40,000〜45,000円
住民税 ▲15,000〜20,000円
所得税(源泉) ▲8,000〜10,000円
手取り 約205,000〜215,000円

この金額から保育料(地域・年齢・所得によって1〜8万円台まで幅あり)が出ていく。 手元に残る実収入は、育休給付金をもらっていたときよりも下回る可能性がある。

育休中は給付金(育休前賃金の最大80%相当)が入りながら社会保険料が免除されていたため、実質的な手取り水準が意外と高かった。 復帰後はそのギャップを感じやすい時期だ。


ボーナスへの影響——算定期間に育休が含まれる場合

公立教員のボーナス(期末手当・勤勉手当)は、6月1日・12月1日を「基準日」として計算される。 基準日前6ヶ月間の在職状況によって、支給割合が決まる仕組みだ。

在職期間割合の早見表

基準日前6ヶ月の在職月数 支給割合
6ヶ月以上 100%
5ヶ月以上6ヶ月未満 80%
4ヶ月以上5ヶ月未満 60%
3ヶ月以上4ヶ月未満 40%
3ヶ月未満 30%

育休中も基準日に在職していれば支給は受けられるが、在職割合に応じた減額が適用される。

さらに、勤勉手当は実際の勤務日数に基づく成績率で決まるため、育休期間が長いほど減額幅が大きくなる。 4月復帰なら6月ボーナスはほぼ満額に近い水準に戻るが、9月以降に復帰した場合は12月ボーナスも大きく影響を受ける。

復帰タイミングとボーナスの損得計算

復帰タイミングをいつにするかの判断は、育休給付金との比較だけでなく、ボーナスへの影響も計算に入れたほうがいい。

具体的な例で考える。 月給28万円の教員のボーナス(年2回)は通常合計120〜130万円程度。 4月1日復帰 vs 6月2日復帰で比較すると、6月ボーナスだけで数十万円単位の差が出る計算になる。

一方、育休給付金は最大子どもが1歳になるまで(延長で1歳6ヶ月〜2歳まで)受給できる。 給付金の受給期間を伸ばすか、ボーナスの満額支給を優先するか——2つのトレードオフをシートで整理してから復帰月を決めると後悔が少ない。


部分休業・育児短時間勤務の給与減額幅

育休から復帰した後、すぐにフルタイムに戻れないケースは多い。 公立学校には「部分休業」と「育児短時間勤務」の2種類の制度がある。

部分休業

子が小学校就学前まで取得可能。 1日につき2時間まで休業でき、その分の給与が減額される。 計算式は「時間単価 × 部分休業時間数」で、差し引きはシンプルだ。

たとえば月給28万円の教員が、1日1時間の部分休業を20日間取得した場合。

時間単価の計算式は「月給 ÷ 154時間(週38.75時間 × 4週相当)」が目安で、約1,818円/時間。 20時間分 ≒ 36,000円程度の減額となる。

部分休業は「最大2時間」なので、早退または遅出のいずれかで活用するケースが多い。 保育所の迎えに間に合わせるための使い方がメインになる。

育児短時間勤務

子が小学校就学前まで取得可能(こちらも同じ)。 週19時間25分、週23時間15分など、認められた勤務パターンから選択する。 フルタイムとの差分が給与から差し引かれる。

週19時間25分(半分以下)を選択した場合、単純計算で給与は半額近くになる。

2025年4月から「育児時短就業給付金」が開始された。 これは時短勤務で賃金が下がった分に対して、雇用保険から給与額の10%相当が支給される制度だ。 ただし、公立教員は雇用保険の適用外のため、この給付金の対象外となる。 この点は民間と比較して不利な部分のひとつだ。

育児短時間勤務と共済掛金の扱い

短時間勤務で給与が下がると、共済組合の標準報酬月額も下がる。 それ自体は毎月の掛金が減るので家計的にはラクになるが、将来の年金受給額(退職共済年金)に影響する点は頭に入れておきたい。

3歳未満の子を養育している期間は「養育期間標準報酬月額特例」の申請ができる。 これは「子どもが生まれる前の標準報酬月額を使って年金を計算する」という特例で、時短で掛金が下がっても年金が目減りしにくくなる制度だ。 この申請を忘れる人が多いので、復帰後なるべく早く共済組合窓口に申請書を提出する。


復帰1年目の家計設計——三重苦をどう乗り越えるか

育休復帰後の1年目は、家計的にかなりタイトになりやすい。

三重苦の構造

  1. 給与の手取りが育休中より下がる(社会保険料・住民税の復活)
  2. 保育料が加わる
  3. 時短勤務で基本給も下がる(時短を選んだ場合)

これに通勤費の実費負担、仕事着や職場で必要なものを買い直す初期費用が重なる。

特に復帰後1ヶ月目は「様子見」の感覚で家計を動かしたほうがいい。 予想外の控除項目が出ることも多いため、最初の給与明細を必ず全項目チェックする。

家計を守るための3つの行動

① 支出の「固定費」を先に把握する

復帰前に、保育料の決定通知を取り寄せて月の固定費を計算する。 共済掛金の概算も教育委員会の共済組合に確認できる。

家計管理ツールを使って支出を一元管理すると、「どこで詰まっているか」が見えやすくなる。 給与・保育料・住民税を一覧にして、残る可処分所得を把握してから生活費の配分を決める順序が重要だ。

② 配偶者の収入との合算で考える

教員の場合、配偶者が公務員や会社員であることも多い。 復帰1年目の収入が大きく下がる場合、世帯全体の収支で考えると余裕が出やすい。

「自分の給与だけで生活費を賄う」という発想から「世帯全体で収支を管理する」発想に切り替えるだけで、心理的な負担もかなり軽くなる。

③ 保育料は所得ベース、翌年度に下がる可能性がある

認可保育所の保育料は前年度の所得(住民税額)で決まる。 育休取得中に所得が下がっていた年が課税基準になるタイミングでは、保育料が低く設定されることがある。 逆に、育休前の高収入が課税基準になっている年は保育料が高い。

この「ズレ」は最大1〜2年続くことがある。 最初の年が一番きつく、翌年度から楽になるケースも多いので、長い目で見た設計が大事だ。


配偶者の扶養に入る判断ライン

「時短にするなら、いっそ扶養に入ったほうが得?」という疑問を持つ人もいる。

公立教員は共済組合員なので、配偶者の被扶養者になるためには「年収130万円未満(または180万円未満)」という所得要件をクリアする必要がある。

育児短時間勤務中でも、月額換算で130万円÷12=約10.8万円を超える見込みであれば扶養には入れない。

週19時間25分の短時間勤務を選んでも、公立教員の俸給はそれなりの水準があるため、実際には年収130万円を下回るケースはほぼない。 つまり、「扶養に入る」という選択肢は公立教員にはほぼ関係ない、と考えておいていい。

ただし、私立学校の非常勤講師として育休から復帰するケースや、退職後に育休代替で短時間のみ働く場合は、所得要件の確認が必要になる。

また、「103万円の壁」(所得税の配偶者控除)については、育休中の給付金は非課税なので所得に含まれないが、復帰後の給与は課税対象になる。 配偶者が控除を受けたい場合は、年間の給与所得をトータルで確認する必要がある。


復帰前にやっておくべき手続きチェックリスト

復帰後にあわてないために、復帰1〜2ヶ月前から確認しておきたい項目を整理した。

給与・税金まわり

  • 育児休業等終了時報酬月額変更届の提出確認(所属校の事務担当者へ)
  • 住民税の納付方法確認(特別徴収 or 普通徴収)
  • 所得税の扶養控除等申告書の更新(子どもを扶養に追加)
  • 育児短時間勤務を取得する場合の給与見込み額の確認

共済組合まわり

  • 養育期間標準報酬月額特例の申請(子が3歳未満の間に提出)
  • 短時間勤務取得時の掛金変更の確認
  • 育休中の長期給付(年金)への影響確認

保育・生活まわり

  • 保育所入所通知と月額保育料の確認
  • 通勤経路・通勤手当の届出更新
  • 育児支援制度(部分休業・育児短時間勤務)の申請書類提出
  • 家計管理ツールの設定・更新
  • 復帰月の手取り概算の事前計算(給与明細に慌てないため)

FAQ

Q. 育休中に昇給が止まると、将来の退職金にも影響しますか?

退職手当の計算には「勤続年数」と「退職時の俸給月額」が使われる。 育休期間は勤続年数に含まれる(法律上、育休取得中も在職扱い)ので、勤続年数そのものは減らない。 ただし号俸の上昇が遅れた分だけ、退職時点の俸給月額がやや低くなる可能性はある。 影響は数千〜数万円程度と試算されることが多いが、育休を長く取るほど積み上がるため、気になる場合は各自治体の教育委員会共済担当窓口に試算を依頼できる。

Q. 6月ボーナスの基準日直前に復帰するのと4月に復帰するのでは、ボーナスにどれくらい差が出ますか?

基準日(6月1日)の前6ヶ月で「在職期間割合」が決まる。 4月1日復帰なら在職2ヶ月で40%支給。 5月1日復帰なら在職1ヶ月で30%支給。 前年12月1日〜翌年5月31日の間に6ヶ月以上在職していれば100%となる。 育休前から通算で考えると、実際にどの割合が適用されるかは所属する教育委員会の規則による部分もあるため、事前に確認を。

Q. 時短勤務中でもiDeCoは継続できますか?

iDeCoは加入者の申請ベースで掛金を設定するため、時短勤務中でも継続可能だ。 ただし、掛金の上限額は公務員として月1.2万円(2024年12月時点)が上限になる。 復帰後の家計に余裕ができたタイミングで再開・増額を検討するといい。 iDeCoについては教員のiDeCo上限・節税額の計算でまとめている。

Q. 時短勤務中の共済掛金が下がると、老後の年金受給額も下がりますか?

標準報酬月額が下がると掛金も下がるが、「養育期間標準報酬月額特例」を申請すれば、子どもが3歳になるまでの期間は育休前の標準報酬月額で年金を計算してもらえる。 この申請は自動ではないため、復帰後なるべく早く共済組合に申請書を提出する必要がある。 申請が遅れても遡及適用が認められるケースがある(要確認)ため、気づいた時点で窓口に問い合わせてほしい。

Q. 復帰後の保険は見直したほうがいいですか?

育休中に加入している生命保険・医療保険の内容は、収入が変わるタイミングで一度確認しておきたい。 時短で給与が下がった場合、保険料の負担感が増すこともある。 また、子どもが生まれたことで受け取り型の死亡保険が必要になるケースもある。 復帰後の保険見直しポイントもあわせて読んでほしい。

Q. 育休から復帰後にNISAを再開するタイミングはいつが適切ですか?

復帰後1〜2ヶ月目は「手取りの実額を確認する」期間にあてたほうがいい。 給与明細を読み込み、毎月の余剰資金が確定してからNISAの積立額を設定する順序が正しい。 焦って積立額を設定して家計を圧迫するより、3〜4ヶ月かけて収支を安定させてから始める。 30代教員の資産形成ロードマップも参考にしながら、復帰後のポートフォリオを組み直してみてほしい。


復帰後の家計管理と資産形成

育休復帰後にNISAやiDeCoを再開しようとしても、家計の収支が見えていなければ掛金設定ができない。

まず復帰1〜2ヶ月目は「手取りの実額を確認する」ことを最優先にする。 給与明細をしっかり読んで、控除内訳を把握する。 その上で、余剰資金をどう運用するかを考える順序にしたい。

育休前から資産形成を続けていた人は、30代教員の資産形成ロードマップも参考にしながら、復帰後のポートフォリオを再設計してみてほしい。


まとめ

育休復帰後の給与は、号俸としては「育休前に戻る」が、手取りは思ったより少ないケースがほとんどだ。

主な理由は4つ。

  1. 社会保険料(共済掛金)の控除再開
  2. 住民税の天引き再開
  3. 時短勤務を選んだ場合の基本給減額
  4. 保育料という新たな固定費の発生

ボーナスも在職期間割合に応じた減額がある。 復帰タイミングをいつにするかは、給付金だけでなくボーナスへの影響も含めて計算する価値がある。

共済組合の「養育期間標準報酬月額特例」は忘れがちだが、長期的な年金受給額に関わるので必ず申請する。

復帰後の家計全体の整理には、教員の産休・育休お金ガイド(親ピラー)もあわせて参考にしてほしい。


本記事の内容は2026年5月時点の制度に基づいています。自治体・教育委員会・共済組合によって細則が異なる場合があります。個別の確認は所属先の共済担当窓口へ。