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私立教員と公立教員では、副業規制の法的根拠がまったく違う。

公立教員は地方公務員法で副業が原則禁止されていて、許可なく報酬を得ると懲戒処分のリスクがある。 一方、私立教員は「民間企業の従業員」として扱われる。 法律レベルでの副業禁止規定は存在しない。

ただし「じゃあ何でもOK」かというと、そうではない。 副業の可否を決めるのは、各学校法人の就業規則だ。

私は元小学校教員で私立学校の勤務経験はない。 だから「私立はこうだった」という体験談は持っていない。 ただ、公立側で副業規制と向き合ってきた経験と、私立教員への取材・調査をもとに、この記事を書いた。 私立教員が副業を検討するときに本当に必要な情報だけを整理している。


私立教員の副業規制は「就業規則」が全て

公立との根本的な違い

公立教員が副業を禁止される根拠は地方公務員法第38条だ。 「報酬を得て事業又は事務に従事すること」が原則禁止されていて、許可を得た場合のみ例外的に認められる。

私立教員にはこの規定が一切適用されない。 私立学校法人は「民間法人」であり、教員は「民間企業の従業員」だからだ。

では何が副業の可否を決めるかというと、各学校法人が定める就業規則になる。 労働基準法89条により、常時10人以上の労働者を使用する事業場は就業規則の作成・届出が義務づけられている。 そして就業規則の中に副業に関する条項が設けられている場合、それが法的拘束力を持つルールになる。

つまり「私立なら副業できる」は半分正解、半分不正解だ。 学校法人ごとに副業の可否は異なるし、同じ学校法人でも改訂のタイミングで変わることがある。

副業禁止の就業規則は法的に有効か

「民間企業なのに副業禁止にできるの?」と疑問に思う人もいる。

厚生労働省は2018年のモデル就業規則改訂で、副業・兼業を「原則容認」するスタンスを示した。 ただしこれはあくまでモデルであり、各企業に強制されるものではない。

裁判例を見ると、副業禁止規定は「無制限に有効」ではなく、以下の場合に限り合理的と解されている。

  • 本業の労務提供に支障が生じる場合
  • 企業の機密情報が漏洩するおそれがある場合
  • 企業の名誉・信用を損なう行為がある場合
  • 競業により企業の利益を害する場合

逆に言うと、これらに該当しない副業まで禁止するのは過度な制限として、規定自体の有効性が争われることもある。 ただし実際に争うには労力がかかるので、まず就業規則を確認して学校と話し合うのが現実的だ。


就業規則の確認方法

見るべき3つの書類

私立教員が副業の可否を確認するときに見るべき書類は主に3種類ある。

1. 雇用契約書 採用時に交わした書類。 副業・兼業の禁止や制限が直接記載されているケースもある。 「勤務時間外の業務従事については会社の許可を要する」といった文言が入っていれば、副業には事前申請が必要だ。

2. 就業規則本体 最も重要な書類。 「服務規律」「兼業・副業」「禁止事項」といった章に副業に関する条項が書かれていることが多い。 就業規則は労働者が閲覧できるよう周知義務があるので、人事・総務に申し出れば見せてもらえる。 閲覧を拒否されること自体が違法なので、もし断られたら労働基準監督署に相談できる。

3. 学園内規・倫理規程 大きな学校法人では、就業規則とは別に「教職員倫理規程」や「学園内規」を設けているところがある。 特に宗教系・伝統校系の法人に多い。 「学校の品位を傷つける行為の禁止」として、副業や情報発信が制限されている場合がある。

条文の読み方

就業規則の副業条項には大きく3パターンある。

全面禁止型 「許可なく他の会社等の業務に従事してはならない」 → 事前に学校の承認が必要。黙って始めると服務違反になりうる。

届出型 「副業・兼業を行う場合は事前に届け出ること」 → 禁止ではなく届出義務。実態は「報告さえすればOK」なことが多い。

自由型 副業に関する条項が存在しない、もしくは「妨げない」と明記されている。 → 原則自由。ただし競業行為の制限は別途かかることがある。

自分の学校がどのパターンかを把握することが、副業を始める前の最初のステップになる。


学校法人ごとの実態差

伝統校・宗教系法人は厳しめの傾向

私立学校でも、創立100年を超えるような伝統校や宗教系法人は副業規制が厳しいケースが多い。 「教職員は学校の顔」という意識が強く、外部での活動に対して敏感な傾向がある。 就業規則の文面よりも、慣習的な「やらないほうがいい空気」が強く作用することもある。

副業の前に学校の文化を読む必要がある。

中堅・新興系法人は比較的オープン

2000年代以降に設立・拡大した中堅や新興系の学校法人、あるいは教育ベンチャーに近い性格を持つ法人は、副業に対して比較的柔軟なケースが多い。 「教員自身がスキルを磨くことを歓迎する」というスタンスを明示している学校もある。 外部での登壇・執筆・コンサルを奨励しているところすら存在する。

公立より厳しいケースがある

「私立は自由」と思われがちだが、公立よりも制限が厳しいパターンも存在する。 特に競業行為の制限は私立特有の問題だ。

たとえば私立中高一貫校で勤める教員が、外部の進学塾や個別指導塾で講師業をする場合、学校の生徒と接触するリスクがある。 生徒の引き抜き、自校の授業内容の漏洩、学校との利益相反——こうした問題を懸念して「他塾・他校での指導禁止」を明記している学校法人は少なくない。

これは公立教員にはない視点だ。 公立は「副業禁止」だからシンプルに申請が必要というだけだが、私立は「副業はできるが競業は禁止」という複雑な構造になっている場合がある。


競業行為禁止の実務的な解釈

どこから「競業」になるか

競業避止義務とは、簡単に言うと「勤め先と競合する仕事をしてはいけない」という義務だ。 労働者は労働契約上の信義則から、使用者の利益を不当に損なわない義務を負っている。

私立教員に当てはまる具体例を挙げると以下のようになる。

競業になりやすい副業

  • 自校の生徒が通う塾・予備校での講師業
  • 自校と競合関係にある他の私立学校での非常勤
  • 自校在籍生を相手にした個別指導・家庭教師

競業になりにくい副業

  • 自校の生徒と接点のない年代・地域での家庭教師
  • 教育と無関係のジャンルでのライティング・翻訳
  • 自分の専門知識を活かした研修・セミナー登壇(学校外の社会人向け等)

ポイントは「自校の利益を直接的に損なうかどうか」だ。 グレーゾーンは多いので、判断に迷う場合は学校に確認するか、就業規則の文言を弁護士に読んでもらうのが確実だ。

NDAと競業避止条項の確認

一部の私立学校では、雇用契約書や別途の誓約書で秘密保持契約(NDA)競業避止条項を求めることがある。

副業を始める前に、自分が署名した書類の中にこれらの条項が入っていないかを確認することを勧める。 特に「在籍中および退職後〇年間は競合他社への従事を禁止する」といった文言があれば、副業の選択肢が大きく絞られる。


私立教員に向く副業10選

就業規則を確認した上で、私立教員の特性を活かした副業を10個整理した。

1. Webライター 教育・子育て・学習法などのジャンルは需要が高い。 文章を書くことに慣れている教員には入りやすい副業だ。 クラウドワークスやランサーズで案件を探せる。 単価は1文字0.5〜3円と幅広いが、専門性を出せれば単価交渉もしやすい。

2. 教育系ブログ・YouTube 時間はかかるが、一度資産になれば継続収益が見込める。 私立教員ならではの視点(中高一貫のカリキュラム、大学受験指導のノウハウ等)は差別化になる。 開設直後から収益が出るわけではないため、長期投資として構える必要がある。 → 詳しくは教員のブログ・YouTube副業完全ガイドを参照。

3. オンライン家庭教師 manabo・マナリンク・ストアカなどのプラットフォームを使えば個人契約のリスクを抑えられる。 自校の生徒と接触しない設計にすれば競業リスクも低い。 教科の専門性が収入に直結しやすい副業だ。

4. 教材・参考書の執筆 出版社から依頼を受けて問題集や参考書の原稿を書く仕事。 現役教員からの依頼は珍しくなく、学校を通じて声がかかることもある。 ロイヤリティ収入が見込める点でリターンが大きいが、最初の実績を作るまでに時間がかかる。

5. 企業研修・セミナー講師 コミュニケーション・プレゼン・ファシリテーションなど、教員が日常的に使っているスキルは企業研修で需要がある。 社会人向けの研修会社に登録する形が一般的。 時間単価が高く、週末1回で数万円になることも珍しくない。

6. 教育コンサルタント 学習塾・EdTechスタートアップ・地方の教育委員会などが、現役教員の知見を求めることがある。 副業としての顧問契約・アドバイザー契約という形で関わるケース。 競業にならない範囲での関与が条件になる。

7. 翻訳・英語添削 英語教員であれば特に活かしやすい。 翻訳会社への登録や、オンライン英語添削サービスへの登録から始めやすい。 特定の生徒と直接接触しない業務形態のため、競業リスクが低い。

8. 資格・検定講座の講師 英検・TOEIC・数検・漢検などの対策講座は民間の資格予備校が常に講師を募集している。 自校の生徒と関係のない会場・年代を選べば競業リスクを抑えやすい。

9. 写真・動画販売 PIXTAやShutterstockなどのストックフォトサイトに素材を登録する形。 学校・教育・子ども関連の写真は需要がある(被写体となる児童生徒は絶対NGだが)。 時間を選ばないため、教員の生活リズムに合わせやすい。

10. ハンドメイド・物販 メルカリ・BASE・minne等を使ったハンドメイド販売や転売。 学校との利益相反が生じにくく、就業規則上も問題になりにくいケースが多い。 ただし月20万円を超えると確定申告が必要になる点は押さえておく。

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副業がバレる原因と対策——私立教員特有の事情

公立教員との違い

公立教員の場合、副業がバレるルートは主に「同僚からの密告」「SNSの特定」「住民税の異常な増加」の3つが多い。

私立教員の場合も同じリスクはあるが、加えて「競業他社に勤めていることが生徒・保護者経由でバレる」という私立特有のリスクがある。 自校の生徒が通う塾で働いていたら、翌週には学校中に知れ渡るということが実際に起きている。 副業の業種選択の時点で、このリスクを排除することが最初の対策だ。

住民税でバレる仕組み

副業収入が年間20万円を超えると確定申告が必要になる。 確定申告をすると前年の総所得が自治体に把握され、住民税が計算される。

住民税は通常、勤務先の給与から天引きされる「特別徴収」で納める。 副業収入が加算されると住民税の総額が増え、勤務先の経理担当者が「給与水準に対して住民税が多すぎる」と気づくことがある。 これが副業バレの定番ルートだ。

私立教員が使える普通徴収の切替

この問題への対策が「副業分の住民税を普通徴収(自分で納付)に切り替える」方法だ。

確定申告の際、申告書第二表の「住民税に関する事項」欄で、給与以外の所得にかかる住民税を「自分で納付」に選択する。 これにより副業分の住民税は自宅に納付書が送られてくる形となり、勤務先に通知される住民税は給与分のみになる。

ただし注意点がある。 副業が「給与所得」になる場合(ダブルワーク・アルバイト等)は、特別徴収の対象になりやすく、普通徴収への切替が認められないケースがある。 副業収入を「雑所得」として申告できる形(ライティング・ブログ収益・業務委託等)にしておくと、この対策が機能しやすい。

→ 詳しいバレ防止の手順は副業がバレない方法——教員向けの住民税対策と確定申告にまとめた。


確定申告の基本——20万円ルールと私立教員への適用

副業収入と20万円ルール

給与所得者(私立教員はこれに該当)が副業で得た所得の合計が年間20万円以下の場合、所得税の確定申告は不要だ。 これが「20万円ルール」と呼ばれるものだ。

ただし「申告不要」なのは所得税についてのみ。 住民税の申告は別途必要になる場合があるので混同しないように注意したい。

また、20万円以下でも確定申告をしたほうが得な場合がある。 医療費控除・ふるさと納税のワンストップ特例を使わない場合の控除適用等が該当する。

私立教員が意識すべき申告の注意点

所得の種類の判定 副業収入は得方によって「事業所得」「雑所得」「給与所得」などに分類される。 ブログ・ライティング・翻訳などは原則「雑所得」として申告する。 継続的・反復的に行っていて規模が大きければ「事業所得」になる可能性もある。

経費の計上 副業に関連した費用(PCの購入費・書籍代・通信費など)は経費として計上できる。 経費を差し引いた後の「所得」が20万円以下かどうかが申告義務の判断基準になる。

記帳・証拠書類の保管 副業を始めたら、収入と経費の記録をつけておく習慣を最初から作ること。 青色申告の要件を満たせば65万円の特別控除が使えるため、規模が大きくなってきたら検討に値する。

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→ 副業確定申告の全手順は教員の副業確定申告ガイド——20万円ルールから青色申告までで詳しく説明している。


公立教員との比較まとめ

私立と公立の副業規制を整理すると以下のようになる。

比較項目 公立教員 私立教員
規制の根拠 地方公務員法第38条 就業規則(法人による)
副業の原則 原則禁止 法律上は自由
許可・申請 任命権者への申請が必要 就業規則に従う
競業制限 基本的に全副業に制限 競業行為に特化して制限
副業バレのリスク 住民税・密告・SNS 同上+生徒・保護者経由
副業所得の申告 20万円超で確定申告 同じ

公立の副業全体像については公立教員の副業完全ガイド——地方公務員法と許可申請の実態を参照してほしい。


よくある質問(FAQ)

Q1. 私立教員は法律上、副業を禁止されていますか?

法律上の禁止規定はない。 地方公務員法の適用対象外であるため、公立教員のような法律ベースの制約はない。 ただし就業規則に「副業禁止」や「事前申請義務」が定められている場合はその規則に従う必要がある。

Q2. 就業規則を見せてもらえない場合はどうすればいいですか?

就業規則は労働者への周知義務があり(労働基準法第106条)、閲覧を求めることは労働者の権利だ。 「就業規則を閲覧したい」と人事・総務に申し出て、それでも拒否されるなら管轄の労働基準監督署に相談できる。

Q3. 副業禁止の規定を破った場合、どうなりますか?

就業規則違反として懲戒処分の対象になりうる。 口頭注意・戒告・減給・出勤停止・解雇といった段階があり、違反の程度や学校の判断次第だ。 「懲戒解雇」には合理的な理由が必要で、副業禁止規定を破っただけでの解雇が有効か否かは個別の状況による。

Q4. 副業収入が少額でも住民税の影響はありますか?

副業所得が20万円以下でも住民税の申告が必要な場合がある。 住民税は「総所得」に対して計算されるため、副業収入があれば税額に影響する。 ただし少額であれば月数百円程度の差に収まることが多く、経理担当者が気づくレベルにならないケースも多い。

Q5. 「他塾での講師業は禁止」と書かれていますが、オンライン家庭教師はどうですか?

就業規則の条文の読み方による。 「塾・予備校での講師業」と明記されていれば、対面・オンラインを問わず対象になりうる。 「学習指導全般」という広い書き方であれば、オンライン家庭教師も制限される可能性がある。 「自校の生徒と利益相反しない範囲で可」という条項であれば、自校生徒と接点のないオンライン家庭教師はOKと解釈できる。 グレーゾーンは必ず就業規則の原文と照らし合わせ、判断に迷う場合は学校に確認することを強く勧める。

Q6. 副業がバレたとき、即解雇になりますか?

即解雇にはならないケースがほとんどだ。 まず注意・指導が入り、その後の対応によって処分が決まる。 ただし競業行為や生徒への不利益が伴う場合は、懲戒処分が重くなる可能性がある。 「バレてから対処」よりも、事前に就業規則を確認して必要な申請をしておくほうが、長期的なリスクを圧倒的に小さくできる。


まとめ——私立教員が副業を始める前にやること

私立教員の副業は、公立ほどのハードルはない。 ただし「規制がないから何でもOK」という楽観は危険だ。

副業を始める前に確認すべきこと

  1. 雇用契約書・就業規則・学園内規を読む
  2. 副業禁止・届出義務・競業行為禁止の条項を探す
  3. 届出が必要なら先に申請する
  4. 副業の種類が競業にあたらないか判断する
  5. 収入が年20万円を超えそうなら確定申告の準備をする
  6. 住民税の普通徴収切替を確定申告時に選択する

副業は学校生活の延長ではなく、自分のスキルと時間を社会に還元する手段だ。 規制をクリアした上で始めれば、教員としてのキャリアを豊かにする可能性が十分にある。

私立教員としての転職・キャリア相談については以下も参考にしてほしい。

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