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結論:教員の副業は「3層」で判定する
「教員は副業全部ダメ」は間違い。 法律が規制しているのは、あくまで「任命権者の許可なしに行う営利活動」。
正確には以下の3層で分けられる。
- 許可不要で可能 — 投資・フリマ・小規模な家業手伝いなど
- 許可申請をすれば可能 — 執筆・講演・家庭教師・非常勤講師など
- 原則不可・要相談 — アルバイト的労務提供・店舗運営・投げ銭収益など
この記事は業種・業態別の「可否一覧」に絞った参照型記事。 P3「公立教員副業ガイド」で書いた制度の全体像や、 「副業がバレない方法」で書いた住民税の実務は、 それぞれの記事に譲る。
法的根拠の最小確認
詳細は親ピラーに書いているので、ここでは「判定に必要な条文だけ」押さえる。
地方公務員法38条(公立教員に適用) 任命権者の許可なく、営利企業の役員を兼ねたり、自ら営利企業を営んだり、 報酬を得て事業・事務に従事することを禁じる条文。 「許可を受けなければ」なので、裏返せば「許可があればできる」。
教育公務員特例法17条(教員に特有) 「教育に関する他の職を兼ねること」については、本務に支障がないと任命権者が認めれば 給与を受けながら兼職できる。 つまり、塾講師・家庭教師・非常勤講師などは「教育関連」として許可を取りやすい根拠になる。
国家公務員法103条・104条 国立学校など国家公務員身分の教員に適用。 地公法38条と趣旨は同じだが、適用先が異なる点に注意。
私立学校の教員 法律上の制約は地公法・教特法の対象外。 ただし就業規則や雇用契約で「兼業禁止・要許可」を定めているケースが多い。 必ず自校の就業規則を確認すること。
業種別 可否一覧表
表1:許可不要でできる副業
| 副業の種類 | 可否 | 補足・条件 |
|---|---|---|
| 株式投資・投資信託 | 許可不要 | 利益に関係なく投資行為自体は自由 |
| NISA・iDeCo | 許可不要 | 制度利用は問題なし |
| FX・仮想通貨取引 | 許可不要 | 本業に支障が出ない範囲で |
| 不動産投資(小規模) | 許可不要 | 5棟未満・10室未満が目安(※後述) |
| 太陽光発電(小規模) | 許可不要 | 出力が小さい自家消費・売電は通常許可不要 |
| フリマアプリ(私物処分) | 許可不要 | 不用品の売却。継続的な仕入れ転売はNG |
| 家業の手伝い(無報酬 or 少額) | 許可不要 | 「家族の農業を手伝う」など。報酬が発生する場合は要確認 |
| 執筆・原稿料(社会通念上の範囲) | 許可不要 | 年数万円程度、継続性が薄い場合。継続的・大口は許可申請へ |
| 講演料(社会通念上の範囲) | 許可不要 | 1回限りPTAや地域行事など。継続化・組織相手は許可申請へ |
| 競馬・競艇等の払戻金 | 許可不要 | 所得は「一時所得」または「雑所得」扱い |
不動産投資の「5棟10室」について 「5棟未満・10室未満・年収500万円未満」のいずれかを満たす場合は 「事業的規模でない」と判断され、原則として許可申請不要とされることが多い。 ただし自治体・任命権者によって判断が異なるため、 区分マンション1室でも事前確認する教員は多い。 不安なら学校長・教育委員会に相談しておくのが無難。
表2:許可申請をすれば可能な副業
| 副業の種類 | 可否 | 許可の根拠・窓口 |
|---|---|---|
| 執筆・出版(継続的・大口) | 許可申請で可 | 地公法38条許可。出版社経由の原稿は許可を取りやすい |
| 講演・研修講師(継続・法人相手) | 許可申請で可 | 地公法38条 or 教特法17条(教育的内容なら後者が有利) |
| 大学・専門学校の非常勤講師 | 許可申請で可 | 教特法17条の「教育に関する職の兼職」として処理されることが多い |
| 家庭教師(個別・継続) | 許可申請で可 | 教特法17条。紹介会社経由でも直接契約でも申請は必要 |
| 塾講師(アルバイト的でなく講師契約) | 許可申請で可 | 教育関連なら教特法17条で許可を得やすい。報酬上限目安は自治体ごとに異なる |
| スポーツコーチ・部活外部指導員 | 許可申請で可 | 教育委員会公認の外部指導員制度を使う場合はスムーズ |
| 教材・テキスト販売(出版社経由) | 許可申請で可 | 出版社に著作権・印税が発生する形であれば処理しやすい |
| ストアカ等での講座開催(教育的内容) | 許可申請で可 | 受講料収益は「事業所得または雑所得」。継続性があれば申請を |
| オンライン家庭教師(マナリンク等) | 許可申請で可 | 家庭教師と同じ扱い。プラットフォーム経由でも申請必須 |
| コーチング(教育・キャリア系) | 許可申請で可 | 「教育に関する事業」として申請が通るケースあり。内容と実態による |
許可申請の流れの概要 申請先は基本的に「所属校長→教育委員会(任命権者)」の順。 申請書の書き方については別記事「兼業許可申請書の書き方」で詳しくまとめている。
表3:原則不可・要相談の副業
| 副業の種類 | 可否 | 理由・備考 |
|---|---|---|
| 飲食店・小売店などの店舗経営 | 原則不可 | 「自ら営利企業を営む」に直接該当。職専免がない限り困難 |
| アルバイト的な労務提供(時給・日給制) | 原則不可 | 地公法38条の「報酬を得て事務に従事する」に該当 |
| 派遣・パートタイム就労 | 原則不可 | 雇用契約を結ぶ労務提供は同上 |
| ライブ配信(投げ銭収益・Super Thanks) | 原則不可・要相談 | 継続的に報酬を得る行為は「事業的」とみなされる可能性。自治体判断によってグレー |
| ブログ・YouTubeの広告収益(継続的・大規模) | 要相談 | 小規模・教育的内容なら許可取得のケースあり。詳細は別記事「教員のブログ・YouTube副業」へ |
| 代行業(家事・育児・運転等) | 原則不可 | 労務提供の典型。許可が下りることはほぼない |
| 不動産業(仲介・管理会社設立) | 原則不可 | 宅建業登録+会社設立は「営利企業の役員兼務」に該当 |
| キャバクラ・ホスト等の水商売 | 原則不可 | 信用失墜行為禁止(地公法33条)にも抵触リスク |
「要相談」に分類したものは、自治体や校長・教委の判断で可否が分かれる。 「グレーゾーンだから何もしない」よりも「申請してみて判断を仰ぐ」ほうがリスクは低い。 申請して断られた場合は活動前に止まれる。無許可で始めると処分対象になる。
私立教員と公立教員の規制の違い
| 比較項目 | 公立教員 | 私立教員 |
|---|---|---|
| 根拠法 | 地方公務員法38条・教特法17条 | 法律上の制約なし |
| 実際の規制 | 任命権者(教委)の許可制 | 就業規則・雇用契約による |
| 厳しさ | 自治体・学校種で差があるが原則厳格 | 学校によって「禁止」から「申請制」まで幅広い |
| グレーゾーンへの対応 | 明文化された手続きがある | 就業規則の解釈次第でケースバイケース |
| 確認先 | 学校長→教育委員会 | 学校の就業規則・管理職 |
私立教員は「法律がないから自由」ではなく、 就業規則違反は懲戒処分の対象になる。 特に副業を始める前に、就業規則の「兼業禁止条項」または「届出制条項」を確認すること。
月収目安と確定申告ライン
副業を始める前に「どこから申告が必要か」を知っておく。
確定申告が必要になるライン(公務員の場合)
- 副業の所得(収入−経費)が年間20万円を超えた場合
- 複数の雑所得があり、合計20万円超の場合
「所得」であって「収入」ではない。 たとえば原稿料30万円でも、取材費・通信費などで10万円かかっていれば所得は20万円。 申告不要の範囲に収まることもある。
| 副業の種類 | 月収の目安 | 所得区分 | 年20万超えやすさ |
|---|---|---|---|
| 株式投資(配当・売却益) | 0〜数十万円(変動大) | 譲渡所得・配当所得 | 源泉分離課税で処理されることが多い |
| FX | 0〜(損失リスクあり) | 雑所得(申告分離) | 利益が出れば申告必要 |
| 不動産投資(家賃収入) | 月3〜10万円が多い | 不動産所得 | 超えやすい。経費計算が重要 |
| 執筆・原稿料 | 月1〜5万円程度が多い | 雑所得 | 継続すると超えやすい |
| 家庭教師・塾講師 | 月3〜8万円 | 事業所得 or 雑所得 | 超えやすい。申告前提で動く |
| 講演料 | 1回5,000〜3万円程度 | 雑所得 | 回数次第 |
| フリマ(不用品) | 月数千円程度 | 譲渡所得(少額なら非課税) | 超えにくい |
住民税の「普通徴収」への切り替えなど申告時の実務は、 「副業がバレない方法」で詳しく扱っている。
よくある疑問
Q1. メルカリで月2〜3万円売っているが、申告は必要か?
不用品の売却であれば「生活用動産の譲渡」として原則非課税。 ただし仕入れた商品を転売している場合は「事業的行為」とみなされ、 所得が年20万円を超えれば申告が必要になる。 「私物の処分」か「継続的な転売ビジネス」かで判定が変わる。
Q2. 無報酬のボランティア活動なら問題ないか?
報酬ゼロであれば地公法38条の「報酬を得て事務に従事する」には該当しない。 ただし本務に著しく支障をきたす活動は信用失墜行為禁止(地公法33条)に抵触するリスクがある。 無報酬でも活動内容・頻度によっては事前に学校長へ報告しておくほうが安全。
Q3. 家庭教師は「個人間契約」なら申請なしでできるか?
できない。 報酬を受け取る継続的な教育活動は、契約形態(個人間か仲介業者経由か)に関係なく、 地公法38条・教特法17条に基づく許可申請が必要。 「バレなければOK」という考え方は処分リスクを抱えたまま活動することになる。
Q4. 副業の許可を申請したら、必ず通るのか?
通るとは限らない。 特に「本務への支障が懸念される」場合や、 「教育公務員の信用を傷つけるおそれがある」場合は却下されることがある。 許可申請書の書き方・添付書類については「兼業許可申請書の書き方」を参照。
Q5. 不動産投資は「どこに申請するか」が分からない。申請しなくていいという話も聞くが?
「5棟未満・10室未満・年収500万円未満」の小規模投資は、 事業的規模ではないとして許可不要とする自治体が多い。 ただしこれは「慣例」であり、明文化された全国統一ルールではない。 区分マンション1室の購入でも「事前に教育委員会に確認した」という教員は少なくない。 「大丈夫らしいから黙ってやる」より「確認して問題ないと分かってからやる」のが確実。
Q6. 私立教員だが、就業規則に「兼業禁止」とある。それでも副業できないか?
就業規則が「完全禁止」なら、副業は就業規則違反になりうる。 ただし「届出制(申請して許可を得れば可)」や「軽微な活動は届出のみ」という規定になっているケースも多い。 就業規則の原文と、管理職・人事担当への確認が先決。
許可申請で可能な副業の始め方——プラットフォーム例
許可を取ったあと、実際にどこで活動するかをまとめておく。
スキルシェア・講座販売
- ストアカ(ストリートアカデミー): 教育・ビジネス・趣味の講座を1回から出品可能。価格設定は自由。先生向けの講座を開いている現役・元教員が多い。
- ココナラ: スキルを500円〜販売。教材制作・学習相談・プレゼン資料作成など教員スキルが売れやすいカテゴリあり。
- タイムチケット: 30分単位で時間を販売。教育相談・学習コーチングなど。
オンライン家庭教師
- マナリンク: 教師登録制のオンライン家庭教師プラットフォーム。時給・コマ数は講師が設定。在職中の教員が登録するケースもある(許可申請は別途必要)。
- トライのオンライン家庭教師: 大手家庭教師派遣のオンライン版。安定した案件が多い。
執筆・コンテンツ販売
- note: 有料記事・マガジン販売。教育系のnoterとして活動する教員も増えている。
- Kindle出版(KDP): 印税率70%。電子書籍は比較的許可が取りやすいとされる(出版社経由でないが、原稿料的な扱いに近い)。
ブログ・YouTubeでの広告収益については別記事「教員のブログ・YouTube副業」で詳しく扱う。
まとめ:副業は「できるかどうか」より「どう動くか」
教員が副業に踏み出せない一番の理由は「何がOKで何がNGか分からない」から。 この記事の一覧表を手元に置いて、まず自分がやりたい副業の区分を確認する。
- 許可不要なら: 確定申告の準備だけすれば動き出せる
- 許可申請が必要なら: 申請書を準備して学校長に相談する
- 原則不可なら: 近い別の形を探す(たとえばアルバイトではなく「教材執筆」に形を変える)
処分を受けた事例の多くは「無許可で継続的に収益を得ていた」ケース。 許可申請は面倒に感じるが、通ってしまえば合法的に副収入を得られる安心感はかなり違う。
公立教員副業ガイド(P3ピラー)では、 副業制度の全体像・よくある処分事例・副業解禁の流れも網羅している。 本記事と合わせて読むと制度理解がより深まる。
免責事項: 本記事は一般的な情報提供を目的としています。法的・税務的な個別判断は税理士・弁護士へのご相談を推奨します。副業の可否は自治体・学校・任命権者によって異なります。