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副業をやりたいけど、申請書の書き方がわからない——という教員からの相談は、元同僚でもよく聞いた。 「何を書けば通るのか」「どう書くと却下されるのか」が不透明すぎて、最初の一歩が踏み出せないまま諦めている人が多い。

この記事では、許可申請書に書くべき5項目の具体的な記入方法と、2026年4月に変わった副業ルールの改正内容を合わせて整理する。 申請が通りやすくなる書き方のコツも、教育委員会や校長が何を気にしているかという視点から解説する。

公立教員がどうすれば合法的・正規の手続きで副業を始められるかに特化した内容だ。

公立教員の副業ルールの全体像については、公立教員が副業するための全手順完全ガイドはこちら→


1. 副業許可申請書とは何か——法的根拠を押さえる

まず前提を整理する。

公立学校の教員は地方公務員だ。地方公務員法38条には「職員は、任命権者の許可を受けなければ、営利企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない」と定められている。

要するに、報酬が発生する活動は原則すべて許可が必要だ。

さらに教育公務員特例法17条には、「教育公務員は、教育に関する他の職を兼ね、又は教育に関する他の事業若しくは事務に従事する場合においては、給与を受け、又は受けないにかかわらず、任命権者の許可を受けなければならない」という規定もある。

教員の場合、教育活動に関係するかどうかに関わらず、報酬を得る活動はすべて許可申請の対象と考えておくのが安全だ。

申請書の名称は自治体で異なる

「副業許可申請書」という統一書式は存在しない。自治体・学校設置者によって名称が違う。

よく使われる名称の例:

  • 兼業等承認申請書
  • 職員兼業許可申請書
  • 営利企業等への従事許可申請書
  • 自営兼業承認申請書

まず自分の学校の事務職員か人事担当に「副業したい場合の申請書はどれですか」と聞くのが最初のステップだ。様式が自治体のウェブサイトに公開されていることもある。

提出先と決裁のルート

申請書は一般的に、校長を経由して教育委員会(任命権者)に提出する。決裁が下りる段階は自治体によるが、多くの場合:

  1. 本人が申請書を作成
  2. 校長に説明・提出
  3. 校長が教育委員会へ進達
  4. 教育委員会が審査・決裁
  5. 許可通知が交付される

校長は「中継点」ではなく、この段階で実質的な最初の審査者として機能している。校長を納得させられる申請書を書くことが最初のハードルだ。


2. 2026年4月の改正で何が変わったか

2026年4月、国家公務員の副業規制に大きな変化があった。人事院が「自営兼業」の承認基準を改正し、これまで曖昧だった「社会的に意義のある活動」と「本人の知識・技能を活かした活動」についての判断基準が明確化された。

新設された2つの自営兼業基準

改正で新設された承認基準は大きく2つだ。

①職員の知識・技能を活かした事業 本職の専門性を活用した活動を、より広く認めるという方向性だ。教員でいえば、教育分野での講演・執筆・コンサルティング・オンライン講師業などが該当しやすくなった。

②社会貢献に資する事業 NPO活動・地域振興・防災・環境などの社会的意義がある活動も、一定条件下で承認対象に含めるとした。

地方公務員への影響

ここで注意が必要だ。この改正は国家公務員の基準であり、地方公務員に直接適用されるわけではない。

ただし、地方公務員の副業ルールは各自治体が定めており、国家公務員の基準変更を受けて地方でも判断の柔軟化が進む傾向がある。実際、2020年代以降、複数の自治体教育委員会が副業許可の判断基準を緩和しており、この流れは2026年以降も続くと見られる。

実務上の意味: 申請書を書く際に「この活動が自分の教育者としての知識・技能を活かしたものである」「社会的意義がある」という点を明記することで、審査側も承認しやすくなっている。これを積極的に活用するのが、2026年以降の申請書の書き方のコツだ。


3. 申請書に書く5項目——何を聞かれるのか

書式は自治体によって異なるが、ほぼすべての申請書で確認される5項目がある。

項目①: 従事する事業・雇用主(事業者名)

「誰のためにどんな仕事をするのか」を書く欄だ。

記入のポイント:

  • 個人事業(ライター・講師・不動産賃貸など)なら「個人事業」「自営」と書く
  • 会社等に雇用される場合は、会社名・所在地・代表者名を書く
  • 「未定」「検討中」は基本的にNG。申請前に仕事が確定している状態にする

教員の場合、本業との利益相反が疑われる場合(受験産業・塾業界・教材会社など)は特に詳しく書く必要がある。

項目②: 業務内容

「具体的に何をするか」を書く欄だ。ここが最も丁寧に書くべき項目だ。

避けるべき書き方: 「執筆業」「コンサルタント」という曖昧な一言 推奨する書き方: 「教育分野に関するウェブメディアへの記事執筆(週末に自宅で実施、月4〜8時間程度)」

業務内容の説明には以下を含めると審査が通りやすい:

  • 具体的な作業内容
  • 作業場所(自宅かどうか)
  • 作業時間帯(平日夜・土日のみ、など)
  • 本職の教育活動との関連性(あるいは無関係であること)

項目③: 従事期間

開始日と終了日(または「継続的に実施」)を書く。

注意点:

  • 期間が未定の継続的な活動は「令和○年○月○日より継続」と書く
  • 講演や単発の仕事は都度申請が必要な自治体もある
  • 許可には有効期間が設定される場合があり、年度ごとの更新申請が必要なケースもある

項目④: 報酬額・収入見込み

「いくら稼ぐ予定か」を書く欄だ。ここを正直に書くことを避けたがる人がいるが、虚偽申告は後で懲戒処分につながるリスクがある。正直に書くべきだ。

記入の目安:

  • 月額または年額で書く(「月3〜5万円程度」など範囲でもOK)
  • まだ収入が発生していない段階なら「収入見込みなし〜数万円程度」でも構わない
  • 高額になる見込みがある場合でも、正直に書いた上で「本職への支障なし」の説明で補う

報酬額が大きいほど審査は慎重になるが、それ自体が却下理由にはならない。問題になるのは「本職への支障」だ。

項目⑤: 本職(教育活動)への影響・支障の有無

これが審査の核心部分だ。教育委員会が最も重視するのは「本業の教員としての職務に支障が出ないか」という点だ。

書くべき内容:

  • 副業を行う時間帯(授業・校務中は行わない旨)
  • 学校の施設・設備・情報を使用しない旨
  • 児童生徒・保護者との利害関係が生じない旨
  • 体力・精神的な負担について(「週末2時間程度の作業のため支障なし」など)

ここで「支障はありません」の一言で終わらせず、なぜ支障がないかを具体的に書くことが通るコツだ。


4. 教員が通りやすい書き方のコツ——校長・教育委員会の視点

元教員として、職員室で副業申請の話を聞いていた経験からいくつか整理する。

「本職に集中している教員」のイメージを守る書き方

審査する側(校長・教育委員会)が最も嫌がるのは「副業に熱心すぎて授業がおろそかになりそうな教員」というイメージを持たれることだ。

申請書全体を通して「副業は本職のすき間時間で完結するもの」「本職への影響はゼロ」というメッセージを一貫させる。

具体的には:

  • 月間の作業時間を控えめに書く(実態より多少少なめでも)
  • 「土曜日の午前中のみ」「長期休暇中に集中して行う」など時間の制限を明示する
  • 「本職で得た知識を活かした社会貢献的な活動」というフレームを使う

事前に校長に相談する

申請書を提出する前に、校長に口頭で「こういう副業を考えているんですが」と相談しておくのが最大のコツだ。

申請書が机上に突然置かれるより、事前に話を通しておいた方が校長も審査しやすい。「先日相談した件で申請書を作りました」という流れにすると、校長側の心理的ハードルが下がる。

「教育との関連性」を前面に出す

2026年の改正の流れでもあるが、「自分の教員としての専門性を活かした活動」として申請書に位置づけることで通りやすくなる。

例:

  • 教育系のウェブライター → 「教員経験を活かした教育情報の発信」
  • 講演・セミナー講師 → 「教育分野における知見の社会還元」
  • 個別指導・家庭教師 → 「教員免許・専門知識を活かした教育支援」

ただし、受験産業・進学塾・特定の学校と競合する活動は、利益相反の疑いを持たれやすい。説明に工夫が必要だ。


5. ケース別記入例

4つのケースで、業務内容欄の記入例を示す。

ケース①: Webライター(教育系メディアへの執筆)

業務内容:
教育・子育て分野に特化したウェブメディアへの記事執筆業務。
執筆テーマは教育制度・学習法・育児情報など。
作業はすべて自宅にて、土日・祝日・長期休暇中に行う。
学校の設備・情報・児童生徒との関係は一切使用しない。
月間作業時間は10〜20時間程度を見込む。

本職への影響:
授業・校務・部活動の時間帯には一切従事しない。
精神的・体力的な疲弊が本職に及ばないよう、1週間の作業時間に上限を設けて管理する。

ケース②: 講演・研修講師

業務内容:
保護者向け教育講演会・企業内研修の講師業務。
依頼は年間3〜5回程度、各2時間前後。すべて土日・長期休暇中に実施。
講演内容は教育方法・学習習慣づくりなど、教員経験に基づく内容。

本職への影響:
事前準備は自宅で行い、学校施設・時間を使用しない。
勤務時間中の活動は一切ない。

ケース③: 不動産賃貸(所有物件の管理)

業務内容:
自己所有の賃貸物件(マンション1室)の管理・賃貸。
管理会社委託のため、日常的な作業は発生しない。
収入形態は賃料収入(月額○○円)。

本職への影響:
管理業務は管理会社が代行しており、勤務時間中の対応は不要。
本職への支障は生じない。

ケース④: 家業(農業・家族経営)の手伝い

業務内容:
家族が経営する農業(△△市所在)の補助的な作業。
年間を通じて夏季・冬季休業中に農作業補助を行う。
報酬形態は家族間の取り決めによる(年額○○円程度)。

本職への影響:
作業時期は学校の長期休業期間に限定しており、通常の授業期間中は関与しない。

6. 申請から許可までの流れと期間

一般的なスケジュール

  1. 申請書作成・提出(本人 → 校長)
  2. 校長による事前確認:1〜2週間
  3. 校長から教育委員会への進達
  4. 教育委員会での審査:2週間〜1か月
  5. 許可通知の交付

合計で申請から許可まで1か月前後かかるケースが多い。副業開始を急いでいる場合は、早めに動き出すことが重要だ。

許可の有効期間

許可には有効期間が設定される場合がある。例えば「令和○年度末まで」「1年間」など。 継続的に副業を行う場合は、年度更新の申請が必要になるケースがある。許可通知に有効期限の記載があれば必ず確認する。

副業開始前に必ず許可を得る

許可が下りる前に副業を始めるのは規則違反だ。「申請中だから大丈夫」という考えは通用しない。許可通知を受け取った後、指定された開始日以降に活動を開始する。


7. 申請が却下されたときの対応

なぜ却下されるのか

教育委員会が許可申請を却下する主な理由は:

  1. 本職への支障が疑われる場合 — 副業に費やす時間・精神的負担が大きいと判断
  2. 利益相反の疑い — 教え子・保護者との金銭的関係が生じる活動
  3. 公教育への不信を招く恐れがある活動 — 宗教団体・政治活動・品位を傷つける内容
  4. 営利目的が強すぎると判断 — 本業との比較で収入規模が大きすぎる場合

却下後の対応

まず却下理由を確認する。 口頭でも構わないので「どの点が問題でしたか」と教育委員会担当者や校長に聞く。 多くの場合、申請書の記載内容・説明不足が原因であり、書き直して再申請できる余地がある。

修正して再申請する。 却下理由が「業務内容の説明不足」「本職への影響の懸念」であれば、その点を補足した上で再申請する。

副業の規模・形式を変更する。 却下された業種・形式にこだわらず、通りやすい形(時間・報酬・関与度を絞る)に変更して再申請するのも現実的な対応だ。

諦めないことが大事

教員の副業に対する教育委員会のスタンスは、自治体によっても担当者によっても異なる。一度却下されたからといって永久に無理というわけではない。制度改正の流れも教員の副業に対してより許容的な方向に動いており、タイミングや活動の種類を変えることで承認につながるケースは多い。


8. よくある質問(FAQ)

Q1. ブログやSNSで収入を得る場合も申請が必要ですか?

報酬が発生するなら原則として申請が必要だ。ブログのAdsense収入・アフィリエイト収入・Xの収益化なども、継続的に報酬を得る活動として申請対象となる。ただし、年間の収入が非常に少額(趣味の範囲)と判断される場合の扱いは自治体によって異なる。まず担当に確認するのが安全だ。

Q2. 2026年4月の改正で申請手続き自体は簡単になりましたか?

手続きの書式が変わったわけではない。変わったのは審査の「基準」だ。「知識・技能を活かした活動」「社会貢献的な活動」という観点を申請書で明示することで、審査側が承認しやすくなっている。

Q3. 副業を始める前に確定申告の準備も必要ですか?

副業収入が年間20万円を超える場合は確定申告が必要になる。許可を得てから副業を始めるのと同時に、収入・経費の記録を始めておくと確定申告が楽になる。税金の扱いについては公立教員の副業・節税完全ガイドはこちら→を参照。

Q4. 私立学校の教員も同じ手続きですか?

私立学校教員は地方公務員ではなく、地方公務員法38条の適用対象外だ。ただし就業規則で副業禁止・許可制としている学校が多い。私立教員の場合は、学校の就業規則を確認し、必要であれば就業規則に基づく申請を学校に行う形になる。

Q5. 校長が個人的に反対している場合はどうすればいいですか?

校長は審査の中継点であり、最終決定権は教育委員会にある。校長が「進達しにくい」と言う場合でも、本人が直接教育委員会の人事担当に相談することは可能だ。ただし、関係性を損ねないよう慎重に動く必要がある。副業の内容・申請書の書き方を見直した上で、改めて校長と話し合うのが現実的だ。

Q6. 許可後に副業の内容や収入が変わった場合はどうすればいいですか?

許可を得た内容から大きく変更(業種変更・報酬額の大幅増加など)があった場合は、変更の届け出または再申請が必要になる。事前に許可通知の条件を確認し、変更が生じた際は速やかに学校・教育委員会に報告するのが安全だ。


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免責事項: 本記事は2026年5月時点の情報をもとに執筆しています。副業に関する法制度・各自治体の運用は変更される場合があります。最新の制度確認・個別判断は勤務先の教育委員会または専門家にご相談ください。