PR表記: 本記事は広告・アフィリエイトを含みません。情報提供を目的とした記事です。


結論から言う

「住民税の申告不要制度」——上場株式等の配当所得・譲渡所得について、所得税と住民税で別の課税方式を選択できた制度——は、令和5年分(2023年分)の確定申告(令和6年度課税)から廃止済みだ。

「2026年に廃止される」という古い情報がいまだに出回っているが、それは間違い。 すでに終わった話として処理しないといけない。

この改正が教員にとって実際に何を意味するかは、副業の中身によって大きく変わる。

  • NISAで運用している人: 関係なし(NISAは非課税口座なので、この改正の対象外)
  • 特定口座(源泉徴収あり)で配当を受け取り、確定申告で配当控除を取ろうとしていた人: 要注意
  • 副業で雑所得や事業所得があるだけの人: 直接関係なし(ただし20万円以下ルールの誤解は別途確認が必要)

この記事では以下を整理する。

  1. 廃止された「住民税申告不要制度」とは何だったか
  2. 令和5年分から何が変わったか(具体的な課税のされ方)
  3. 教員への波及効果——扶養・保育料・配偶者控除への影響
  4. NISAなら影響なしである理由
  5. 副業の「20万円以下ルール」と住民税申告の関係(よく混同されるポイント)
  6. 給与所得+副業所得の住民税計算実例
  7. 副業の住民税を「普通徴収」にする手順と自治体別注意点
  8. 住民税通知書の教員向け読み方
  9. 今すべき再点検チェックリスト

免責事項: 本記事は一般的な情報提供目的であり、個別の税務アドバイスではありません。具体的な判断は税理士にご相談ください。


1. 廃止された制度——そもそも何が選べたのか

令和4年分(2022年分)以前の仕組み

上場株式等の配当所得や株式譲渡所得については、以前は所得税と住民税で異なる課税方式を選べた

具体的には、次の3つの組み合わせが可能だった。

所得税の選択 住民税の選択
総合課税で申告 申告不要制度を選択
申告分離課税で申告 申告不要制度を選択
申告不要 申告不要

なぜこの組み合わせが使われていたかというと、所得税では確定申告して配当控除を受けつつ、住民税では申告不要にして住民税の所得を低く抑えるという節税スキームがあったからだ。

住民税の合計所得金額が増えると、国民健康保険料(組合員以外)・保育料・後期高齢者医療保険料・扶養判定・配偶者特別控除の適用に影響が出る。 だから「所得税は申告、住民税は申告しない」という選択に合理性があった。

教員は共済組合に加入しているので国保の問題はないが、扶養している家族がいる場合の扶養判定や、保育園を利用している場合の保育料の算定には、住民税の合計所得金額が影響する。

制度が廃止された理由

この「別々に選べる」仕組みは、所得税と住民税が同じ収入に対して別々のルールを適用するという制度的なゆがみがあった。 「節税できる人とできない人」で不公平感も生まれていた。

令和4年度税制改正大綱でこの制度の廃止が決定。 令和5年分(2023年分)の確定申告(令和6年度住民税課税)から適用された。


2. 令和5年分から何が変わったか

課税方式は所得税に連動する

廃止後のルールはシンプルだ。 所得税で選んだ課税方式が、そのまま住民税にも適用される。

所得税の選択 住民税の課税方式
申告不要 住民税も申告不要
総合課税で申告 住民税も総合課税
申告分離課税で申告 住民税も申告分離課税

選択の幅は変わっていない。 変わったのは「所得税と住民税で別々の選択ができなくなった」という点だけだ。

影響が出るのはどのケースか

令和4年分以前に「所得税は総合課税・住民税は申告不要」という組み合わせを使っていた人は、令和5年分から同じことができなくなった。

具体的には次のようなケースで影響が出る。

影響あり

  • 所得税の確定申告で配当控除を受けていた(総合課税を選んでいた)
  • 申告分離課税を選んで損益通算していた

これらのケースでは、以前は住民税で「申告不要」を選ぶことで住民税側の所得を抑えられていた。 令和5年分からはそれが使えない。

影響なし

  • NISAで運用している(後述)
  • 特定口座(源泉徴収あり)で確定申告しない(申告不要のまま)
  • 副業が雑所得・事業所得のみ(配当とは無関係)

3. 教員への波及効果——扶養・保育料・配偶者控除

住民税の合計所得金額が増えるとどうなるか

配当所得を総合課税で申告して住民税に反映されると、住民税の合計所得金額が増える。 これが他の制度に連鎖する。

扶養控除の適用

被扶養者(子・親など)の合計所得金額が48万円以下であることが扶養控除の条件だ。 配当所得が住民税に算入されると、被扶養者の所得が条件をオーバーする可能性がある。

例えば、退職した親が特定口座の配当収入を年50万円受け取っている場合、以前は住民税で申告不要を選ぶことで所得を抑えられた。 令和5年分からはそれができないため、所得が48万円を超えて扶養から外れるケースが出てくる。

配偶者特別控除

配偶者の合計所得金額によって控除額が変わる。 配偶者が株式の配当収入を持っている場合、住民税の合計所得金額が増えて控除額が段階的に下がる可能性がある。

保育料の算定

認可保育園の保育料は、市区町村が定めた基準に基づき、住民税の所得割額等を参照して決まるケースが多い。 配当所得が住民税の課税ベースに算入されると、保育料が上がるケースがある。

配偶者(教員の場合は公立中学校教員のような場合も多い)の株・投資信託の配当が年間一定額あり、これを確定申告で申告している場合は、令和5年分から住民税も連動することを理解しておく必要がある。

教員自身の住民税への影響

教員は地方公務員の共済組合に加入しているため、国民健康保険料への影響はない。 一方、住民税の合計所得金額が増えることで住民税の課税額そのものが上がる

以前は「所得税は総合課税、住民税は申告不要」で住民税負担を抑えることができていた。 それができなくなった分、配当を総合課税で申告している人は住民税が増えることになる。


4. NISAなら影響なしである理由

NISA口座の配当・売却益は非課税

新NISA(2024年〜)の成長投資枠・つみたて投資枠の口座内で受け取る配当・分配金・売却益は非課税だ。 所得税も住民税も課税されない。

「課税方式の統一」という改正は、課税される所得に対してどの方式で課税するかを統一するものだ。 非課税のものは最初からそもそも課税されないため、この改正の影響を受けない。

NISAで保有している株の配当がいくらあろうと、それは合計所得金額に算入されない。 扶養判定にも保育料にも影響しない。

ただし受取方法に注意

NISAの配当が非課税になる条件として、**「株式数比例配分方式」**での受け取りが必要だ(株式の配当の場合)。 この方式を選んでいないと、NISA口座外で受け取った扱いになり課税対象になる。

証券会社の設定を今一度確認しておく価値がある。

投資信託の分配金はNISA口座で保有していれば受取方法によらず非課税になるため、こちらは問題ない。

教員のNISA活用については教員のNISA完全ガイドで詳しく整理しているので参考にしてほしい。


5. 副業の「20万円以下ルール」と住民税申告の関係

ここが一番混同されやすい

副業のある教員が「住民税申告不要制度が廃止された」という話を聞いて、「じゃあ副業収入の20万円以下ルールが使えなくなったの?」と混乱することがある。

これは別の話だ。

整理すると次のようになる。

ルール 対象 内容
住民税申告不要制度(廃止) 配当所得・株式譲渡所得 所得税と住民税で課税方式を別々に選べた制度。令和5年分から廃止
20万円以下ルール 副業の雑所得・事業所得等 給与以外の所得が年20万円以下なら所得税の確定申告が不要な特例。今も継続

「20万円以下ルール」は所得税に関する特例であり、住民税には関係ない。 廃止もされていないし、2026年現在も有効だ。

20万円以下でも住民税の申告は必要

ここは別途注意が要る。

所得税の「20万円以下なら確定申告不要」というルールは、住民税には適用されない。 副業所得が20万円以下で確定申告をしない場合でも、住民税の申告は原則として必要だ。

手順は次のとおり。

  1. 確定申告をする場合 → 申告内容が市区町村に通知されるため、住民税申告は不要
  2. 確定申告をしない場合(20万円以下)→ 住所地の市区町村に「住民税申告書」を3月15日(目安)までに提出する

「20万円以下だから何もしなくていい」と放置していると、後から住民税の追徴が来ることがある。 これは廃止された制度とは無関係に、以前から変わらないルールだ。

なぜ住民税は「20万円以下ルール」の対象外なのか

そもそもの話として、「20万円以下なら申告不要」という特例は、所得税法に規定されたものだ。 住民税は地方税法の管轄であり、この特例は住民税には及ばない。

住民税は1円でも所得があれば原則として課税対象になる。 均等割(所得に関わらず一律にかかる部分)の性質上、少額所得者でも住民を名乗る限り課税の可能性がある。

教員の副業で多いのは、原稿料・講演料・教材販売などだ。 これらは「雑所得」に区分されることが多い。 副業の雑所得が年間10万円だったとしても、住民税上は申告義務が生じる。

確定申告をしていれば税務署から市区町村に所得情報が通知されるため、別途住民税申告をしなくて済む。 厄介なのは「所得税は20万円以下だから申告不要」と判断して確定申告も住民税申告もしなかった場合だ。 この場合、市区町村側に副業所得の情報が届かず、後から問い合わせや更正が来るリスクがある。

副業の確定申告と住民税申告の全体像については教員の副業確定申告・完全手順で詳しくまとめている。


6. 給与所得+副業所得の住民税計算実例

住民税の基本構造を押さえる

住民税は2種類の税で構成されている。

  • 所得割: 前年の課税所得×税率10%(都道府県民税4%+市区町村民税6%)
  • 均等割: 所得に関わらず一律。おおむね5,000〜6,000円程度(自治体により異なる)

計算の流れは次のとおり。

課税所得 = 総所得 − 各種所得控除
所得割 = 課税所得 × 10% − 税額控除
住民税額 = 所得割 + 均等割

所得税と似ているが、税率は所得税のような累進課税ではなく一律10%という点が大きく違う。

実例1: 副業収入が年30万円のケース

前提条件

  • 教員A(30代、独身)
  • 給与収入: 420万円
  • 副業収入(原稿料・雑所得): 年30万円
  • 副業の経費: 5万円
  • 副業の純利益(雑所得): 25万円

給与所得の計算

給与収入420万円の場合、給与所得控除は次の計算で出る。 給与収入400万円超600万円以下の場合、控除額=収入×20%+44万円。 420万円×20%+44万円=128万円。 給与所得=420万円−128万円=292万円。

住民税の計算

雑所得25万円を加えた総所得=292万円+25万円=317万円。

ここから各種控除を引く。 仮に基礎控除(43万円)・社会保険料控除(共済掛金等、仮に48万円)を適用すると、課税所得=317万円−43万円−48万円=226万円。

所得割=226万円×10%=22.6万円。 均等割(仮に5,500円)を加えると、住民税合計=約23.1万円。

副業がなかった場合との差額

副業なしの場合、雑所得25万円が加わらないので課税所得=201万円。 所得割=201万円×10%=20.1万円+均等割=約20.6万円。

差額=約2.5万円。 副業収入30万円(経費引後25万円)のうち、住民税として約2.5万円が追加でかかる計算だ。 実効税率としては副業所得に対して約10%、これに所得税(5〜20%)が加わる。

実例2: 副業収入が年18万円(20万円以下)のケース

前提条件

  • 教員B(20代後半)
  • 給与収入: 350万円
  • 副業収入(ライターなど): 年18万円
  • 副業経費: 3万円
  • 副業純利益(雑所得): 15万円

教員Bは「所得税は20万円以下だから確定申告しなくていい」と判断した。

この場合、所得税の申告は任意だが、住民税の申告は必要だ。 住民税の観点では、15万円の雑所得に対して住民税が発生する。 税率10%で計算すると、追加の所得割は約1.5万円(控除後の課税所得で変動する)。

教員Bがすべき手続きは「住所地の市区町村窓口またはオンラインで住民税申告書を3月15日までに提出する」こと。 確定申告をしないなら、この住民税申告が唯一の手段になる。

均等割の自治体差に注意

均等割は各自治体が設定する。 都道府県民税の均等割は法定の1,500円が基本だが、市区町村民税の均等割は3,000〜4,000円が目安となっており、合計で5,000〜6,000円程度になる。

加えて、森林環境税(国税)として2024年から1,000円が上乗せされている。 これは住民税と合わせて徴収されるため、実質的な均等割相当額は年6,000〜7,000円前後になっている自治体が多い。


7. 副業の住民税を「普通徴収」にする手順と自治体別注意点

特別徴収と普通徴収の違い

教員が副業をして住民税が増えた場合、その増加分がどこから天引きされるかが問題になる。

  • 特別徴収: 勤務先(学校)の給与から毎月天引き。副業の住民税も給与天引き額に上乗せされると、職場の総務担当が気づきやすい
  • 普通徴収: 市区町村から送られてくる納付書で自分で納付。副業分を自分で納めるため、職場の給与明細に影響しない

副業が学校に知られることを避けたい場合、普通徴収を選ぶことで副業分の住民税を職場経由にせずに済む。

ただし、この方法は「副業を完全に隠す」ためのものではない。 住民税の徴収方法を選ぶだけであって、副業の存在自体が市区町村に記録されることには変わりない。 副業が法的に問題のない範囲(教員の場合は兼業許可の範囲内)であれば、普通徴収を活用することには合理的な理由がある。

確定申告で「普通徴収」を選ぶ方法

確定申告書の第2表に「住民税・事業税に関する事項」という欄がある。 その中に「給与、公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法の選択」という項目があり、「自分で納付(普通徴収)」にチェックを入れることで、副業分を普通徴収にできる。

手順

  1. 確定申告書第2表を開く
  2. 「住民税・事業税に関する事項」欄を探す
  3. 「給与、公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法」のうち「自分で納付」を選択
  4. e-Taxの場合は該当の選択肢をクリックするだけ

これを選択すると、副業等の所得に対する住民税分は職場経由にならず、自分で納付書を受け取って納付する。

住民税申告(確定申告しない場合)でも同様

副業が20万円以下で確定申告をしない場合でも、住民税申告書を提出するときに同じ選択ができる。 住民税申告書にも「特別徴収」か「普通徴収」を選ぶ欄がある自治体がほとんどだ。

自治体によって扱いが異なるという現実

注意が要るのは、普通徴収を選択したからといって必ず認められるわけではないという点だ。

住民税の徴収方法は、最終的には各市区町村の判断による。 自治体によっては「一定要件を満たさない場合は特別徴収にする」と定めているケースがある。

また、複数の給与支払者がいる場合(ダブルワーク等)は、自治体が合算して主たる給与から特別徴収する扱いにすることが増えている。 教員の副業で多い「給与以外の雑所得」の場合は普通徴収の選択が通りやすいが、「副業先からも給与をもらっている」ケース(非常勤講師兼任など)は扱いが変わる可能性がある。

元教員の実感として、公立学校勤務の場合は副業が「原稿料」「講演料」「教材販売」などの雑所得系であれば、普通徴収の選択がそのまま通るケースが多かった。 ただし、同じ市区町村でも担当者や年度によって対応が微妙に変わることがあるため、提出前に税務窓口で確認しておくのが確実だ。

普通徴収を選んでも「完全に安全」とは限らない理由

住民税決定通知書が職場に送られる

普通徴収を選んでも、6月頃に職場(勤務先)宛に「住民税特別徴収税額の決定通知書」が送付される場合がある。 これは給与分の住民税に関する通知で、教員の場合は都道府県・市区町村が雇用者(自治体)に送付する。 副業分が別途普通徴収で処理されていても、通知書の合計税額に違和感があると人事や経理が気づくことがある。

副業を持つこと自体が問題なのではなく(適法な範囲なら)、副業を無許可で行っている場合に問題が生じる。 普通徴収はあくまで「住民税をどこで払うか」の手続きにすぎない。 副業の許可・届出の問題は教育委員会や学校管理規則のルールに従うべきで、住民税の徴収方法で解決できるものではない。


8. 住民税通知書の教員向け読み方

6月に届く「特別徴収税額決定通知書」

毎年6月頃、職場経由または自宅に「住民税特別徴収税額決定通知書」または「個人住民税の決定通知書」が届く。 これは前年の所得に対して今年度の住民税がいくらになるかを知らせるものだ。

教員の場合は、都道府県・市区町村が雇用者(自治体や私立学校法人)宛に送付し、そこから給与明細とともに手渡されるケースが多い。

通知書の構成と読み方

通知書には概ね次の欄が記載されている。

①所得の内訳欄

給与所得・雑所得・配当所得などの金額が記載される。 副業の申告をした場合、給与所得の他に雑所得等が記載されているかを確認する。 ここに副業の所得が反映されていれば、申告が正しく処理されている。

②所得控除の内訳欄

基礎控除・配偶者控除・扶養控除・社会保険料控除・生命保険料控除・iDeCo等の小規模企業共済等掛金控除などが記載される。

教員にとって確認したいのは、iDeCoの掛金控除が正しく反映されているかどうか。 iDeCoの所得控除(小規模企業共済等掛金控除)は年末調整や確定申告で処理されたものが反映される。 通知書で控除額を確認し、申告した掛金と一致しているかをチェックする。

③課税所得と税額の欄

所得割と均等割の内訳が記載される。 所得割は「課税所得×10%」から税額控除(調整控除・配当控除等)を引いた額。

副業申告後に初めて届いた通知書の場合、前年より所得割が増えていれば副業所得が正しく算入されている。

④月別の天引き額(特別徴収の場合)

6月〜翌5月の12ヶ月で住民税を分割して給与から天引きする場合、月別の金額が一覧になる。 6月だけ金額が違う(端数の調整)ことがあるため、毎月同額ではない点に注意。

副業所得が反映されているかの確認方法

通知書が届いたら、次の順で確認する。

  1. 「所得の内訳」欄に給与所得以外の所得(雑所得等)が記載されているか
  2. 記載がない場合、住民税申告書が正しく処理されたかを市区町村の税務窓口に問い合わせる
  3. 所得割の税額が前年より増加しているか(副業申告があれば増えるはず)

逆に、副業を申告していないのに所得割が増えていた場合、市区町村が別の情報源から所得を把握している可能性がある。 例えば、副業先の法人が支払調書を税務署に提出していて、それが市区町村に流れてくるケースがある。

原稿料・講演料などは5万円超の場合に支払調書が発行される(源泉徴収もされる)ため、こういった収入は税務署が把握しやすい。 申告しないでいると後から追徴になるリスクがある。


9. 特定口座(源泉徴収あり)の人が再確認すること

源泉徴収あり口座は確定申告しなければ影響なし

特定口座(源泉徴収あり)で配当を受け取っている場合、確定申告しなければ「申告不要」のまま処理される。 この場合、所得税も住民税も口座内で源泉徴収されて完結するため、今回の改正による実務への影響はない。

問題になるのは、確定申告することで還付等のメリットを取ろうとする場合だ。

確定申告すると住民税にも反映される

例えば、次のようなケースで確定申告を検討することがある。

  • 上場株式の損益通算をしたい(複数口座の損益を相殺したい)
  • 配当控除を使って所得税の還付を受けたい
  • 繰越損失の控除を受けたい

これらのために確定申告をすると、令和5年分からは住民税にも同じ課税方式が連動する。 以前は「所得税は総合課税で申告→配当控除で還付を受け、住民税は申告不要で合計所得金額を抑える」という選択ができた。 これが令和5年分からできなくなった。

具体的なシミュレーション例

仮に年収430万円の教員Aさんが、特定口座で配当収入50万円(源泉徴収済み)を持っているとする。

令和4年分以前:

  • 所得税: 総合課税で確定申告 → 配当控除(所得税率低減)で還付あり
  • 住民税: 申告不要を選択 → 合計所得金額に配当50万円が算入されない

令和5年分以降:

  • 所得税: 総合課税で確定申告 → 配当控除で還付
  • 住民税: 総合課税で申告(連動)→ 合計所得金額に配当50万円が算入される
  • → 住民税が増える + 各種控除・保育料判定にも影響

つまり、「確定申告で配当控除を取るかどうか」の損益計算が変わった。 配当控除による所得税の還付額 < 住民税の増加額 になるケースも出てくる。 確定申告したほうが得かどうかは、個人の所得状況を見て判断する必要がある。


10. 副業で配当・株式収入を持つ教員が今確認すること

チェックリスト

以下の質問でYESが1つ以上あれば、この改正が自分に関係する可能性がある。

□ 特定口座(源泉徴収あり)で配当収入を受け取っている □ 令和4年分以前に、配当を確定申告していた(総合課税または申告分離課税) □ 損益通算のために毎年確定申告している □ 配偶者や親族が配当収入を持っており、自分の扶養に入れている □ 子どもが認可保育園に通っており、保育料に関心がある

すべてにNOなら、この改正で実務上の変化はほとんどない。

NISAだけで運用している場合

新NISAの範囲内だけで運用している教員は、この改正に関しては完全にスルーしていい。 ただし前述の通り、NISAの配当受取方式は「株式数比例配分方式」に設定されているかだけ確認しておく。

iDeCoの拠出については配当課税方式の問題とは無関係だが、iDeCo自体の節税メリットを最大化する整理として教員のiDeCo完全ガイドも参照してほしい。

判断が難しいと感じたら

今後の運用方針として「確定申告をするかしないか」の損得計算が複雑になるケースがある。 年収・配当金額・家族構成・保育料の状況が絡むため、自分だけで計算するのが難しい場合は税理士に相談するのが確実だ。


11. 制度改正の背景——なぜ廃止されたのか

不公平感の是正

所得税と住民税で異なる課税方式を選べること自体、制度としての整合性を欠いていた。 税制の原則は「同じ所得には同じルールを適用する」。

配当課税方式の選択分離は、本来一体設計だった所得税と住民税のシステムに、特例として「別々選択」を後付けしたものだった。 知識のある人だけが節税できるという不公平さも問題視されていた。

令和4年度税制改正大綱での決定

廃止の方針は令和4年度税制改正大綱(2021年12月閣議決定)に明記された。 「上場株式等の配当所得等及び譲渡所得等に係る住民税の課税方式の見直し」として整理された。

適用は令和5年分(2023年分)の確定申告(令和6年度住民税)から。 つまり2024年2〜3月に提出した確定申告から新ルールが適用されている。


12. 副業とふるさと納税への影響

住民税の所得割が増えるとふるさと納税の控除上限も上がる

少し別の視点として、配当所得が住民税に算入されることで、ふるさと納税の住民税控除(特例分)の上限が上がるケースがある。

ふるさと納税の住民税控除(特例分)は、住民税の所得割額の20%が上限だ。 配当所得が住民税の課税ベースに含まれると住民税所得割額が増え、ふるさと納税の控除上限も増える。

プラスに働く部分もあるということだ。

ふるさと納税の控除上限の計算方法については教員のふるさと納税完全ガイドで整理している。


13. よくある質問

Q. 住民税の申告不要制度はいつ廃止されましたか?

令和5年分(2023年分)の確定申告からすでに廃止済みだ。 2024年2〜3月に出した確定申告が最初の新ルール適用回。 「2026年廃止」という情報は古く、現時点では誤りとなる。

Q. NISAで運用していれば関係ない?

NISAは非課税なので、この改正の影響を受けない。 ただしNISAの株式配当を非課税で受け取るには「株式数比例配分方式」の設定が必要な点は確認しておくこと。

Q. 副業収入が20万円以下なら住民税の申告も不要?

これは別の話だ。 「20万円以下なら確定申告不要」は所得税の特例であり、住民税には適用されない。 副業所得が20万円以下でも、住民税の申告は原則として市区町村に別途必要になる。

Q. 特定口座(源泉徴収あり)で確定申告しない場合は影響ある?

確定申告しなければ、実務上の変化はほとんどない。 影響が出るのは「確定申告することで配当控除や損益通算を取ろうとする場合」に限られる。

Q. 副業の住民税を普通徴収にしたいがどうすればいい?

確定申告書の第2表「住民税・事業税に関する事項」欄で「自分で納付(普通徴収)」を選択する。 確定申告をしない場合は住民税申告書で同様の選択ができる。 ただし自治体によって扱いが異なるため、確実に普通徴収になるかは窓口で確認する。

Q. 住民税通知書が届いたら何を確認すればいい?

副業申告をした場合は、「所得の内訳」欄に給与所得以外の所得が記載されているかを確認する。 iDeCoを利用している場合は、小規模企業共済等掛金控除が正しく反映されているかも確認する。 税額が大きく増えているなど疑問があれば、市区町村の税務窓口で確認するのが最確実だ。


まとめ

論点 内容
制度廃止のタイミング 令和5年分(2023年分)確定申告から。すでに廃止済み
廃止された制度の内容 配当所得等について所得税と住民税で別の課税方式を選べた仕組み
影響を受ける人 特定口座等の配当を確定申告で申告していた人
影響を受けない人 NISAのみ運用の人・配当所得を確定申告しない人
副業20万円ルールとの関係 無関係。20万円ルールは廃止されていないし、住民税の申告義務も変わらない
波及効果 住民税増加 + 扶養判定・保育料・配偶者控除への影響
普通徴収の選択 確定申告第2表または住民税申告書で選択可能。ただし自治体判断で変わる場合あり
住民税通知書の確認 6月に届く通知書で副業所得の反映・iDeCo控除の反映を確認する

教員が持つ副業収入には、雑所得系のもの(原稿料・講演料)と、投資系のもの(配当・売却益)が混在することがある。 今回の改正は後者の「投資系収入を確定申告で申告するかどうか」の判断に影響するものだ。

前者の雑所得系副業については教員の副業確定申告・完全手順教員で確定申告が必要な人チェックリストで整理している。 節税の全体設計についても組み合わせて読んでほしい。


本記事は2026年6月時点の情報をもとに作成しています。 税制・制度は随時変更される場合があります。 最新の個別判断は税理士にご確認ください。


副業の許可申請・合法な種類の全体像は公立教員の副業完全ガイドにまとめている。

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この記事は元小学校教員が執筆。