合格通知が届いた瞬間は純粋にうれしい。 でも、数日たつと「で、何をすればいいんだろう」という感覚が来る。

採用試験の勉強は死ぬほどしたのに、 合格後の実務については誰も教えてくれない。

この記事では、合格から4月赴任までの3ヶ月で お金まわりに絞って何をすればいいかを具体的に書く。

NISAiDeCoなどの資産形成は別の記事に譲る。 ここでは「4月1日に赴任して最初の給与が出るまで詰まらない」ための実務準備だけを扱う。


合格から赴任日までのリアルなスケジュール

まず全体像を把握しておく。

パターン1:1月内定・4月赴任(最多ケース)

多くの自治体では、2次試験の結果が9〜11月に出る。 そこから採用候補者名簿に登録され、 正式な採用通知(内定)が出るのは 12月〜翌年1月 が一般的だ。

時期 やること
内定通知〜1月末 採用前研修(自治体によって実施)、書類準備開始
2〜3月 引越し・転居手続き、赴任用品の準備
3月下旬 着任前の打ち合わせ(学校訪問)
4月1日 正式採用・辞令交付式
4月25日前後 初任給(自治体によって25日または末日)

内定から赴任まで、最大で約3ヶ月ある。 この期間に動けることは全部動いておく。

パターン2:2次合格直後〜翌年4月赴任(9〜10月合格)

9月に2次合格の場合、赴任まで約6ヶ月ある。 余裕があるぶん「いつかやろう」で先送りにしがちなので、 12月までに下記の実務系を終わらせておくとよい。


赴任前にやるお金準備5つ

1. 給与振込用の銀行口座を確認・開設する

最優先はこれだ。

採用決定後、自治体から「給与振込先の銀行口座」を指定するよう求められる。 指定できる金融機関は自治体によって異なり、 「ゆうちょ銀行か地銀のみ」「ネット銀行も可」と差がある。

まず採用通知と一緒に届く書類を読んで、 振込先として使える金融機関を確認するのが最初の一手。

すでにその銀行の口座を持っていれば問題ない。 なければ、内定直後に開設手続きを始める。 地銀は審査に数週間かかることがあるので、余裕を持って動く。

ポイントは 「給与振込口座」と「生活費管理口座」を最初から分けること。 生活費は地銀の給与口座に残して、 余裕分をネット銀行(楽天銀行・SBI銀行など)に移す設計が使いやすい。 資産形成の話はここではしないが、口座の分け方だけは赴任前に設計しておく。

2. 実印・銀行印・認印の3本を揃える

教員として採用されると、 辞令交付・各種契約・保険加入手続きで印鑑を使う場面が複数回ある。

印鑑の種類 用途 予算目安
実印 辞令交付・賃貸契約・各種重要書類 5,000〜15,000円
銀行印 口座開設・金融手続き 3,000〜8,000円
認印 日常的な書類押印 1,000〜3,000円

実印は市区町村への印鑑登録が必要なので、 転居を伴う場合は新住所に転入後、早めに登録手続きをする。

「三文判で十分では」という声もあるが、 実印だけは専用のものを作っておいたほうがトラブルが少ない。 転居先近くのはんこ屋や、ネット注文(3〜5営業日で届く)を利用する。

3. 通勤・赴任用品の予算を確保する

教員の初任者が赴任前に出ていく費用で見落としがちなのが、 「教職用の細々したもの」の合計だ。

カテゴリ 内容 予算目安
スーツ上下 入学式・保護者会・職員会議用 20,000〜40,000円
ビジネスシューズ 屋内用・屋外用 5,000〜15,000円
上履き・教員用スリッパ 校内常用 1,000〜3,000円
バッグ(通勤・書類用) A4書類が入るもの 5,000〜15,000円
文房具・赤ペン・印鑑ケース 学校業務用 3,000〜5,000円
通勤交通費の立替 定期代は後日支給だが最初は自払い 0〜20,000円

スーツは入学式の前に必要になるため、 3月中旬までに手元に届くよう注文しておく。

通勤定期については、多くの自治体で 実際にかかった通勤費を後から精算する形をとるため、 最初の1〜2ヶ月は立替が発生する。 その分のキャッシュを確保しておく。

4. 社会人向けクレジットカードを1枚作っておく

学生証が使えなくなる前後に、 クレジットカードを1枚作っておくことを強く勧める。

社会人になりたての段階は、カード審査が最も通りやすい時期のひとつだ。 採用通知が出た後、卒業前または卒業直後に申し込むのが現実的なタイミング。

なぜ必要か。 赴任前後は引越し費用・家具家電・制服代などの出費が重なる。 現金やデビットカードだけで対応しようとすると、 決済タイミングと口座残高の管理が煩雑になる。 カードは「立替払いのバッファ」として使い、 翌月引き落とし前に全額返済する使い方を習慣化する。

ポイント還元率・年会費・審査難易度のバランスを考えると、 楽天カード(年会費無料、ポイント還元率1%)が最初の1枚として選びやすい。

楽天カードを申し込む

カード審査は在職証明が出るタイミング(赴任後)以降のほうが通りやすい自治体もある。 卒業前の「内定あり学生」として申し込む方法もあるが、 審査結果は個人差があるため、早めに動いておく。

5. 転居先の住環境コストを把握する

赴任先が現住所と異なる場合、 4月1日より前に引越しを済ませる必要がある

赴任先の学校から「赴任前に打ち合わせに来てほしい」と連絡が来ることもあり、 3月下旬には転居が完了していることが望ましい。

住居については2つのパターンがある。

公務員住宅・教職員住宅に入居するケース 自治体や市町村が管理する教職員用の宿舎が用意されている場合、 家賃は相場より格段に安い(月1〜3万円台が多い)。 申請手続きは採用通知後に自治体の担当部署に問い合わせる。

民間賃貸を自分で探すケース 赴任先が確定したら、不動産ポータルサイトで物件を探す。 初期費用(敷金・礼金・前家賃・仲介手数料)で 家賃の3〜5ヶ月分がかかることが多い。


初任給までの生活費の現実

採用試験に合格した人で、 「初任給が出るまでの60日近くをどう乗り切るか」を計算している人は多くない。

初任給の時期

4月1日採用で初任給が出るのは、 多くの自治体で 4月25日または4月末日 だ。

つまり4月1日に赴任した後、最初の給与を受け取るまでに約24〜30日ある。

さらに4月の給与から5月の給与が出るまでが30日。 「引越しで出費が多い3月末〜4月末の30日間」に、まとまった現金が必要になる。

キャッシュフローの現実

具体的に計算してみる。

時期 支出
3月(引越し・初期費用) 15〜50万円
4月1日〜4月24日 生活費約10〜15万円
4月25日 初任給受け取り(手取り18〜22万円)
5月(住民税・各種控除が本格化) 手取りが4月より減る場合がある

3月末の引越し時点で、 最低でも30〜60万円の手元現金があることが望ましい。

これを読んでいる段階で既に内定が出ているなら、 今すぐ手元現金の残高を確認してほしい。 足りない場合は、奨学金・アルバイト収入・親への一時的な借入など、 具体的な手当を考えておく。

初任給の手取り目安

公立学校教員の初任給は自治体によって異なるが、 額面で20〜23万円前後 が標準的な範囲だ。

ここから以下が引かれる。

控除項目 目安金額
共済組合掛金(短期・長期・退職等年金) 約2.5〜3万円
所得税(源泉徴収) 約5,000〜1万円
住民税(1年目4〜5月は少額か非課税) 0〜数千円
互助会・組合費など 数千円〜1万円

手取りの現実的なレンジは18〜22万円。

「額面20万円だと思っていたら手取り17万円だった」という話はよく聞く。 この数字を前提に、赴任後の生活費設計をしておく。


引越し費用の相場感

赴任先と現住所の距離によって、引越し費用は大きく変わる。

100km以内のケース

地元の学校に赴任するケース。

条件 費用目安
一人暮らし・繁忙期(3月) 5〜10万円
一人暮らし・繁忙期外 3〜6万円
実家から単身 3〜5万円

300km以上のケース(県外・遠方赴任)

離島・都市部から地方・他県への異動が発生するケース。

条件 費用目安
一人暮らし・繁忙期 10〜20万円
家財道具が多い 15〜25万円
長距離・繁忙期(3月) 20〜35万円

3月の引越しは繁忙期で、希望日が埋まりやすい。 内定が確定したら引越し業者への連絡を最優先で動かす。

赴任先が確定するのが2〜3月と遅い場合もある。 そのときは赴任先が決まった直後に複数業者へ一括見積もりを出し、 最も早く動ける業者を選ぶ。


共済組合の加入手続きについて

公立学校に採用されると、 4月1日付で公立学校共済組合に自動加入する。

「自動」というのは本人が別途申請しなくていい、という意味ではなく、 学校が代わりに手続きしてくれるということだ。 必要書類の提出は求められる。

何が変わるか

採用前(学生)は国民健康保険または親の扶養に入っていた。 採用後は 共済組合の短期給付(医療保険相当) が適用になる。

変更点 採用前 採用後
医療保険 国保・親の扶養 共済組合短期給付
自己負担割合 3割 3割(変わらない)
年金 国民年金 厚生年金+退職等年金給付

採用と同時に国民健康保険からの脱退手続きが必要。 これは市区町村の窓口で手続きするが、 忘れている人が結構いる。 4月に入ったら転入届と一緒に処理しておく。

保険証の発行タイミング

共済組合の保険証は、採用後1〜2週間で届くのが一般的だ。 赴任直後は保険証が手元にない状態が生じる可能性があるため、 急病・通院が必要な場合は窓口で「保険証が届いていない」旨を伝えると、 一時的に全額立替で支払い、後日精算できる。


NISA・iDeCo・ふるさと納税は赴任後でいい

この3つは 赴任後3ヶ月以降に検討すれば十分だ。

理由は単純で、 給与が何回か入って、実際の手取りと固定費が確定するまで、余剰資金の計算ができないから。

赴任前に口座だけ開設しておくのはいいが、 拠出額や寄附額は4〜5月の給与明細を見てから設定する。

NISAやiDeCoを焦って始めて手元現金が足りなくなると、 赴任後の生活が本当につらくなる。 資産形成より先に、生活の地盤を作る。

資産形成の始め方・順番については、 新任教員1年目のお金——NISA・iDeCo・ふるさと納税を始める正しい順番 を参照してほしい。


一人暮らしスタートの場合の追加ポイント

実家から通っていた、または親の扶養に入っていた場合、 赴任に伴って一人暮らしを始めると追加でかかるものが多い。

家具・家電の初期費用

ゼロから揃えると30〜60万円かかる。 優先度の高いものから購入するのが鉄則。

優先度 品目 予算目安
最優先 冷蔵庫・洗濯機・電子レンジ 各15,000〜40,000円
必要 ベッドまたは布団セット 10,000〜30,000円
あると便利 炊飯器・掃除機・照明 各5,000〜20,000円
後回しでいい テレビ・デスク・棚類 各5,000〜30,000円

一人暮らしを始める場合、家具家電を全部新品で揃えると予算が膨らむ。 メルカリ・ジモティー・リサイクルショップを組み合わせると、 冷蔵庫・洗濯機・電子レンジの3点を合計3〜5万円で揃えることも不可能ではない。

親の扶養からの脱退

赴任後、年収が103万円を超えると親の扶養から外れる。 年収は4月〜12月の9ヶ月間でも140〜200万円程度になるため、 ほぼ確実に扶養外れの対象になる。

親の勤務先への連絡は親自身がやるべき手続きだが、 「自分が採用された事実を伝えておく」ことは早めにしておく。


まとめ:赴任前3ヶ月でやること一覧

赴任前の実務をリスト化する。

時期 やること 優先度
内定直後 振込先銀行口座の確認・開設
内定直後 実印・銀行印・認印の作成
内定直後 引越し業者の手配(3月繁忙期前)
2〜3月 赴任先の住居確保(教職員住宅か民間賃貸か)
2〜3月 スーツ・通勤用品・教職用品の購入
2〜3月 クレジットカードの申し込み(審査タイミングを確認)
3月末 引越し完了・転入届・国民健康保険脱退手続き
4月1日 採用・辞令交付・共済組合加入書類提出
4月中旬 保険証受け取り確認
4月25日前後 初任給受け取り・手取り額を給与明細で確認
5〜6月 NISA・iDeCo・ふるさと納税の計画開始 低(急がない)

「合格したら何をすればいいか」の実務面は、 教員採用試験の参考書には載っていない。 この記事を見ながら、チェックリストとして使ってほしい。


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この記事は元小学校教員が執筆。