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「初任給っていくらもらえるんだろう?」

教員採用試験に合格して赴任先が決まった後、多くの人が気になるのがこの問いだ。 大学院まで出て、試験も乗り越えて、4月からいよいよ教壇に立つ。 なのに初任給の明細を見て「思ったより少ない」と感じる人は後を絶たない。

その理由は単純で、額面と手取りの差を事前に理解できていないからだ。 地共済の掛金・所得税・住民税が引かれると、手元に残るのは額面の75〜80%前後になる。

この記事では2026年度の公立教員初任給の目安と手取りの計算方法、そして1年目に何をどの順番でやるべきかを整理する。


1. 公立教員の初任給——2026年度の実額と自治体別の違い

全国水準の目安

公立学校教員の初任給は国が定める「教育職俸給表(一)」を基準に、各都道府県が独自に額を設定する。 2026年度の水準では、多くの都道府県で大卒初任給は月額18〜22万円前後に設定されている。

人事院勧告に基づく水準改善が近年継続しており、2024〜2025年度にかけて全国的に数千円単位の引き上げが行われた。 2026年度もその流れが続いており、一部の自治体では大卒初任給が22万円台に達しているところもある。

学歴・免許種別による差

学歴・種別 初任給の目安(2026年度)
大卒・普通免許状(1種) 約18〜21万円
大学院卒・専修免許状 約21〜24万円
短大卒・普通免許状(2種) 約17〜19万円

大学院卒の場合は号給が上位からスタートするため、初任給も大卒より数万円高くなる。

自治体によって数万円の差がある

同じ大卒でも、首都圏・政令指定都市と地方・小規模自治体では初任給に差がある。 東京都・神奈川県・大阪市などは全国水準より高めに設定されており、大卒で月21〜23万円程度のところもある。 逆に地方の小規模自治体では月18万円台前半というケースもある。

赴任予定の自治体の人事委員会ホームページに具体的な初任給の一覧表が掲載されているため、内定後に確認しておくことをすすめる。

初任者研修手当と地域手当

初任給に加え、地域によっては「地域手当」が加算される。 政令指定都市や首都圏の学校に配属された場合、基本給に対して3〜20%程度の地域手当が上乗せされる。 初任者研修の手当については自治体によって異なるが、独立して支給されることは少なく、通常の給与体系の中に含まれている。


2. 手取りと額面の差はどこから生まれるか

「額面21万円なのに手取りが16万円台だった」という話は教員の間でよく出る。 何が引かれているのかを一度整理しておくと、毎月の明細が見やすくなる。

主な控除項目

控除項目 内容 目安額(額面21万円の場合)
地共済掛金(短期) 医療・育児休業給付などの財源 約8,000〜10,000円
地共済掛金(長期) 公務員年金(退職等年金)の財源 約17,000〜19,000円
所得税 源泉徴収。年末調整で還付あり 約2,000〜5,000円
住民税 1年目は前年所得がゼロのため徴収なし 0円(1年目4〜6月)
共済の他掛金(任意) 任意加入の教職員共済掛金等 個人による

地共済掛金が大きい理由

公立教員は地方公務員等共済組合(地共済)に強制加入する。 地共済掛金は「短期掛金(医療・育休等)」「長期掛金(退職年金)」に分かれており、合計で月額3〜4万円前後が引かれる。

会社員でいう健康保険料・厚生年金保険料に相当する部分だが、掛金率は地共済組合によって異なる。 国民健康保険・国民年金(自営業者の場合)より総額は高いものの、将来の給付(医療・年金)も手厚いという設計になっている。

住民税は2年目6月から始まる

1年目は前年度の所得がゼロ(または学生バイト程度)のため、住民税の徴収は6月以降に始まらない。 ところが2年目の6月からは1年目の所得に応じた住民税が一気に徴収される。 月額1〜2万円程度が追加で引かれることになるため、「2年目の6月に手取りが急に減った」と感じる教員は多い。

これを知らずに1年目の手取りを基準に支出計画を立てると、2年目に家計が狂いやすい。 1年目から「住民税分を貯めておく」か「2年目から徴収されることを前提に生活設計をする」ことが大切だ。


3. 初任給の使い道——3つの優先順位

「初任給を何に使えばいい?」という問いに対して、元教員の立場から言うと答えは3つに絞られる。

優先順位①: 生活防衛費を3〜6ヶ月分作る

何より先に「急な出費があっても生活が崩れない貯金」を作ることだ。 目安は月の支出の3〜6ヶ月分。 月18万円で生活しているなら、54〜108万円が目標になる。

これがないと医療・車の修理・引越しなど突発的な出費が来たときにローンやカードローンを使うことになる。 生活防衛費は「使わない前提の貯金」として普通預金か高金利の定期預金に置いておく。

優先順位②: NISAを始める

生活防衛費が3ヶ月分できたら、次はNISAを始める。 1年目から少額でも積み立てを始めることには長期的な意味がある。 「月5,000円から始めて、余裕ができたら増やす」というやり方で十分だ。

複利の効果は始める時期が早いほど大きい。 月5,000円を30年間積み立て続けた場合と、月10,000円を20年間積み立てた場合では、積立元本も運用益も大きく変わってくる。

NISAの仕組みと証券口座の選び方は教員のNISA完全ガイドはこちら→

優先順位③: 自己投資

教員1年目は研修・書籍・教材購入で出費が重なる。 これらの自己投資は長期的に収入に直結する支出だ。 「使うべきでない出費」と「投資として回収できる出費」を分けて考えることで、1年目の使い道が整理しやすくなる。

研修費・書籍費は後述する特定支出控除の対象になる可能性もある。 節税制度との組み合わせについては教員の節税完全ガイドはこちら→


4. 1年目に絶対やるべき家計管理

家計簿アプリの設定

初任給が振り込まれた翌日から家計管理を始めることをすすめる。 「後でやろう」と思うと、たいていそのまま1年経つ。

おすすめはマネーフォワードMEZaimだ。 銀行口座・クレカを連携させると、支出が自動で記録・カテゴリ分けされる。 「先月食費がいくらかかったか」が分かるだけで、無駄な出費に気づきやすくなる。

先取り貯蓄の自動振替

「余ったら貯金する」方式は機能しない。 給与振込後に自動で別口座に振り替える仕組みを最初から作っておくことが大切だ。

例えば月の貯金目標額を先に決めて、給与振込と同日に定期積金か別の普通預金に自動振替する。 残りで生活する設計にすれば「気づいたら何も貯まっていなかった」という状態にならない。

固定費の整理

通信費・サブスク・保険料など毎月必ず出ていく固定費を一覧化する。 特に前の職場や大学時代から続いているサブスクは、使っていないのに毎月引き落とされているケースがある。 1年目の初期に固定費を整理しておくと、その後の家計管理がシンプルになる。


5. 初任給で組むNISA積立シミュレーション

月5,000円から始めた場合

年数 積立元本 想定運用益(年率5%) 合計
5年 300,000円 約41,000円 約341,000円
10年 600,000円 約177,000円 約777,000円
20年 1,200,000円 約1,057,000円 約2,257,000円
30年 1,800,000円 約2,822,000円 約4,622,000円

月10,000円から始めた場合

年数 積立元本 想定運用益(年率5%) 合計
5年 600,000円 約82,000円 約682,000円
10年 1,200,000円 約354,000円 約1,554,000円
20年 2,400,000円 約2,114,000円 約4,514,000円
30年 3,600,000円 約5,644,000円 約9,244,000円

※上記はすべて試算です。実際の運用結果は保証されません。年率5%は長期のインデックス運用の参考水準として示したものです。

積立額を途中で増やす方法

1年目は月5,000〜1万円で始め、住民税徴収が始まる2年目以降の支出が安定したところで増額する、というステップが現実的だ。 NISA口座は年間120万円(つみたて投資枠)まで増額できる。

「今は少額でいい。大切なのは続けること」という姿勢で始める方が、無理に月3〜5万円で始めて生活が苦しくなり辞めてしまうよりずっと良い。


6. 初任給時に気をつけたい支出の落とし穴

車のローン

配属先が車通勤必須の地域になった場合、4月から車が必要になる。 社会人1年目でローンを組む場合は「初任給で払い続けられる月額かどうか」を手取り額で計算すること。 頭金ゼロ・長期ローンで月3万円の車代を設定すると、生活防衛費もNISAも後回しになりやすい。

中古車・軽自動車で十分な場合は初期費用と月額ローンを最小化し、手元資金を確保する方が1年目の財務的な余裕を生みやすい。

生命保険・医療保険の勧誘

教員になった直後、保険外交員から「教員向けに特別な保険がある」という接触を受けることがある。 職員室に出入りする保険外交員や、先輩教員経由の紹介が典型的なパターンだ。

1年目はまず地共済の給付内容を把握することが先決だ。 地共済には医療給付・傷病手当金・育休中の給付など、民間保険で補う必要がない給付が含まれている。 民間保険が必要かどうかは地共済の内容を確認した後に判断する。

保険の見直し方は教員の保険見直し完全ガイドはこちら→

住宅ローンの早期決断

1年目から「持ち家にしたい」という気持ちになることはある。 ただし勤務地変更・転居異動が発生する可能性がある1〜3年目に住宅ローンを組むことは、返済と移動の両立という点でリスクが高い。

勤務地が固定される可能性が高まる30代以降に検討するか、将来の転勤・異動の頻度を先に確認してから動くことをすすめる。


7. 4月から12月までに準備すべき年末調整・確定申告のこと

年末調整は12月に職場で行う

年末調整は職場(給与支払い者)が代わりに税計算をしてくれる手続きだ。 10〜11月ごろに「給与所得者の扶養控除等申告書」「保険料控除申告書」の書類が配布される。 家族の扶養状況・生命保険料の支払い実績・iDeCoの掛金証明書などを揃えて提出する。

うっかり提出を忘れると税金が多めに引かれたままになるため、配布されたら早めに記入することをすすめる。

1年目に確定申告が必要なケース

以下に該当する場合、年末調整だけでなく確定申告が必要になる:

  • 副業収入が年間20万円を超えた場合
  • 住宅ローン控除(初回のみ確定申告が必要)
  • 医療費が年間10万円を超えた場合
  • ふるさと納税でワンストップ特例を使わなかった場合

1年目でこれらに該当する場合は翌年2〜3月の確定申告期限に合わせて準備する。 e-Taxを使えばスマホから申告できる。

節税と確定申告の全体像は教員の節税完全ガイドはこちら→

iDeCoを始めるなら早い方がいい

iDeCoは掛金が全額所得控除になる節税効果が高い制度だ。 1年目から始めれば、12月の年末調整(または確定申告)で掛金分の所得控除が受けられる。

公立教員の場合、地共済に加入しているため掛金上限は月20,000円(2024年12月改正後)だ。 iDeCoの詳細は教員のiDeCo掛金上限と節税シミュレーションはこちら→


8. FAQ

Q1. 初任給の振り込み日はいつですか?

多くの自治体では月末または毎月25日前後に給与が振り込まれる。 ただし4月の最初の給与は自治体によっては4月末ではなく5月に初回振込という場合もある。 採用通知や辞令に記載されている給与担当部署に確認するか、職場の先輩に聞くのが確実だ。

Q2. 初任給の額面と手取りの差はどれくらいですか?

額面の20〜25%程度が控除として引かれる。 地共済掛金(短期+長期)・所得税が主な内訳で、1年目は住民税がかからないため比較的手取り率は高め。 額面21万円なら手取りは16〜17万円前後という目安だ。

Q3. ふるさと納税は1年目からできますか?

できる。 ただし1年目は1〜12月の給与収入が1年分揃わない状態で寄附することになる。 予想年収を確認して、超過寄附にならないよう上限額を試算してから寄附額を決めること。 ふるさと納税の上限計算は教員のふるさと納税完全ガイドはこちら→

Q4. 教員の給与は毎年どれくらい上がりますか?

公立教員の給与は「号給昇給」という制度で毎年1号給ずつ自動的に上がる仕組みになっている。 昇給額は年数千〜1万円前後が目安だ。 10年目・20年目で見ると初任給より数万円高い水準になっている。

Q5. 残業代は出ますか?

公立学校教員には「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(給特法)」が適用される。 この法律の下では残業代の代わりに「教職調整額」として基本給の4%が一律に支給される仕組みだ。 超過勤務の実態に関わらず一律4%のため、長時間勤務でも追加の残業代は基本的に支払われない。

2024年以降、教職調整額の引き上げや「時間外在校等時間の上限ガイドライン」の運用が継続されているが、制度の根本的な変更はまだ実現していない(2026年5月時点)。

Q6. 初任給でiDeCoとNISAのどちらを先に始めるべきですか?

まずNISAを始めることをすすめる。 NISAはいつでも引き出せるため緊急時のリスクが低い。 iDeCoは60歳まで引き出せない制約があるため、生活防衛費の確保が先だ。 生活が安定したら、節税効果の高いiDeCoを追加するのが定番の流れだ。


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本記事は2026年5月時点の情報です。最新の制度確認・個別判断は専門家にご相談ください。給与・控除額は自治体・個人の状況により異なります。