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「私立で働いているけど、やっぱり公立に移りたい」——そう思っている先生は、思ったより多い。

給与の安定感、退職金の手厚さ、産休・育休の取りやすさ。 公立のメリットを聞くたびに、じわじわ気になってくる。 でも「今さら採用試験を受け直すのか」という二の足もある。

私は元小学校教員で、採用試験の勉強と現場勤務を並走させた経験がある。 その経験をもとに、私立から公立への転職ルートを正直に書いていく。


私立から公立への転職を考える理由

給与の安定感と昇給の予測可能性

私立の給与は、学校法人によって差がかなりある。 勤続10年でも昇給がほぼ止まる学校もあれば、外資系に近い水準を維持するところもある。 「自分の学校の給与体系、正直よくわからない」という先生は珍しくない。

公立は違う。 都道府県の俸給表にのっとって、年齢・経験年数・職位で給与が決まる。 「来年いくらもらえるか」がある程度計算できる。 これは将来設計のうえで大きい。

特に30代以降になると、昇給の差は大きくなる。 同年代の公立教員と私立教員を比較したとき、「なぜこんなに差がついたのか」と初めて気づく人も多い。

退職金の確実性

退職金は、私立と公立でかなり差がある。

退職金目安(定年退職)
公立教員 約2,100〜2,400万円
私立教員 約1,800〜2,300万円(学校による)

金額だけ見れば大差ないように見える。 ただし、私立は「学校法人の経営状況によって変わる」「就業規則で上限が設けられている」ケースがある。 公立は条例・規則で額が決まっているので、経営悪化による減額リスクがない。

私立に長くいるほど、退職金の確実性の差は気になってくる。 「学校が経営難になったら自分の退職金はどうなる?」という不安は、私立教員の間で実際にある。

共済組合と福利厚生の手厚さ

公立教員は地方公務員として「公立学校共済組合」に加入する。 傷病手当金、出産手当金、育児休業給付に加えて、ベネフィットステーションなどの割引サービスも使える。

私立は「私学共済」に加入する学校が多いが、制度の手厚さは学校法人ごとにばらつきがある。 公立に近い水準を整えているところもあれば、健康保険と年金のみというところもある。

産休・育休の取りやすさも、公立のほうが制度的に整っている自治体が多い。 「子どもを産んでも続けやすい職場に移りたい」という動機は、特に20代後半〜30代前半の先生に多い。

転勤リスクは公立のほうが高い

ただし、公立への転職にデメリットもある。 転勤は公立のほうがある。 私立は原則として同一学校法人内での異動だが、公立は自治体の方針で3〜5年ごとに異動が発生する。 「子どもの学区を固定したい」「親の介護がある」という場合は要注意だ。

→ 転職を迷っている人はやめどきチェックリストも参照してほしい。


私立教員が公立へ転職するルート

基本は「教員採用試験」を受けること

私立から公立への転職に特別なルートはない。 都道府県・政令指定都市が実施する教員採用選考試験を受けて、合格する必要がある。

ただし、「私立で経験があるから何か優遇される」わけではない。 筆記・論作文・面接のすべてを受験する。

一方で、私立での現場経験は「面接や論作文での説得力」として活きる。 採点者が見ているのは「この人は採用してもすぐ戦力になるか」だ。 教壇に立った年数と経験を正しく伝えることができれば、新卒者よりも強いアピールになる。

社会人特別選考・経験者選考を使う

多くの自治体が「社会人経験者」向けの特別選考を設けている。

東京都の例

  • 25歳以上かつ教職以外の社会人経験2年以上が対象
  • 一般選考の受験とは別枠で、小論文・面接に重点が置かれる
  • 一般選考より筆記のウェイトが下がる傾向がある

ただし、「私立教員の経験」が社会人経験としてカウントされるかは自治体によって異なる。 私立教員は「教職経験者」として別枠扱いになるケースもあるため、受験する自治体の要項を必ず確認すること。

年齢制限の状況(2026年時点)

  • 全国の約8割の自治体で年齢上限が撤廃または緩和されている
  • 59歳まで受験可能な自治体も増えている
  • 「もう年齢的に無理」と諦める必要はない

校種・教科の転換も可能

「私立中学の教員だったが、公立小学校に転職したい」という場合は、小学校の免許を持っていれば受験できる。 複数免許を持っている人は、志望先の幅が広がる。

「免許がない校種に転職したい」場合は、在職中に通信制大学で追加取得するルートもある。 時間と費用はかかるが、転職先の選択肢が増えるメリットは大きい。

合格後の流れ:採用から着任まで

採用試験に合格した後も、すぐに公立に着任できるわけではない。 一般的な流れは以下のとおりだ。

  1. 10月前後: 合格発表・採用候補者名簿に登録
  2. 11〜2月: 配属先の内示・学校訪問
  3. 3月末: 私立学校に退職届を提出(学校によって期日は異なる)
  4. 4月1日: 公立学校に着任

私立を退職するタイミングと採用試験の合格発表が重なるため、年度をまたぐことが多い。 「合格したが着任は翌年4月」という1年近いギャップが生じることがある。 この間の雇用継続を前の職場に相談できるかも、事前に確認しておきたい。


給与の違い:公立俸給表と私立給与体系の比較

公立教員の給与のしくみ

公立教員の給与は以下で構成される。

構成要素 内容
俸給(本給) 俸給表の号俸に基づく
各種手当 扶養・住居・通勤・期末勤勉手当など
期末勤勉手当 年2回(6月・12月)、民間のボーナスに相当

2026年時点の公立教員の平均年収は、小学校・中学校・高校ともに600〜700万円台が目安。 これは文部科学省の教員給与実態調査や人事院勧告を参照したベースラインだ。

期末勤勉手当は人事院勧告を参考に都道府県が設定するため、年によって若干の増減がある。 2024年度は約4.5ヶ月分相当が支給されている。

私立教員の給与のしくみ

私立は学校法人が独自に設定する。 「公立の俸給表に準ずる」としている学校が多いが、あくまで「準ずる」なので差がある。

初任給だけ見ると私立のほうが若干高い学校もある(23〜25万円程度)。 ただし昇給ペースが遅かったり、期末手当の計算方法が不透明な学校もある。

経験10年・15年と積み上がったときに、公立と私立でどれくらい差がつくかは学校次第。 勤務している学校の就業規則と給与規程を引っ張り出して、シミュレーションしてみることをすすめる。

転職時の初任給扱い

公立に転職すると、私立での経験年数が「号俸の加算」として反映される自治体が多い。 ただし、全額反映されるわけではない。 「私立での10年が、公立では7年扱いになる」というような減算が起きることもある。

転職前に受験先自治体の人事担当者に確認するか、合格後の採用面談で確認するのが確実だ。

iDeCoの使い方が私立と公立でどう変わるかはこちらの記事も参考に。


退職金の違い

公立教員の退職金

公立教員の退職金は、国家公務員退職手当法を準用した各都道府県の条例に基づいて計算される。

概算は以下のとおり。

勤続年数 退職金目安
10年 約300〜400万円
20年 約700〜900万円
30年 約1,500〜1,800万円
定年(38年前後) 約2,100〜2,400万円

これはあくまで目安で、都道府県や役職によって変わる。 重要なのは、「計算式が条例で決まっている」こと。 経営状況で変動する要素がない。

私立教員の退職金

私立は学校法人の就業規則による。 「確定給付型の退職金制度を持つ学校」「中退共(中小企業退職金共済)に加入している学校」「支給なしの学校」など、バラバラだ。

また、私立から公立へ転職した場合、私立での勤続年数は公立の退職金計算に引き継がれない。 公立での在籍年数のみでカウントされる。 30歳で転職すれば、定年65歳まで35年分の退職金が積み上がる計算になる。

「早めに転職したほうが退職金上は得」という逆転現象も起きうる。 特に「今の学校に残って退職金が増えるのを待つ」という判断は、長期的には損になるケースがある。


福利厚生の違い

公立学校共済組合の主なメリット

  • 医療費補助: 一定額以上の医療費が組合負担になる
  • 傷病手当金: 病気・ケガで働けない期間に給与の一部が補填される
  • 出産手当金: 産前産後の給付がある
  • 育児休業: 3年まで取得可能な自治体が多い。復帰後の保障も整っている
  • 宿泊施設・レジャー割引: ベネフィットステーション等の福利厚生サービス

これらは「あればいい」ではなく、「使う場面が必ず来る」制度だ。 特に傷病手当金は、病気や精神的な不調で休職した場合の生活を支える。 私立在籍時にこの制度がなかった人は、転職後に初めてその安心感を実感することになる。

私立の私学共済

私学共済も傷病手当金や出産手当金の仕組みは持っている。 ただし、制度の充実度は学校法人の補填内容によって変わる。

産休・育休については、制度上は整っていても「取りにくい雰囲気」の学校がある。 公立も同じ課題はあるが、近年の自治体の取り組みで取得率は上がっている。


採用試験の対策:私立勤務しながらどう進めるか

スケジュールの現実

公立教員採用試験は毎年6〜7月に1次試験、8月に2次試験が行われる自治体が多い。 年間スケジュールに落とし込むとこうなる。

時期 やること
前年9〜10月 受験自治体の絞り込み・要項確認
11月〜2月 教職教養・専門教科の筆記対策
3〜5月 論作文対策・面接練習開始
6〜7月 1次試験
7〜8月 2次試験(論作文・面接・実技)
9〜10月 合否発表

私立に勤務しながら対策する場合、平日の勉強時間は1〜2時間が現実的なライン。 土日にまとめて学習する週末集中型と組み合わせるのが多い。

授業準備と採用試験対策を同時に進めるのはきつい。 「授業のことは授業中に完結させて、帰宅後は試験勉強に集中する」という切り替えが必要だ。

合格までの期間

1回で合格する人もいるが、2〜3年かかるケースも多い。 特に30代以降で受験する場合は、論作文・面接でのアピール力が合否を左右しやすい。

私立での実務経験をどう言語化するかが、面接と論作文の鍵になる。 「現場で培ったもの」を採点者に伝わる言葉に変換する練習が必要だ。

1年目に不合格でも、翌年に合格する人は多い。 不合格の翌年は「何が弱かったか」がわかっているので、対策が絞りやすい。 焦らず2〜3年のスパンで計画を立てることをすすめる。

筆記対策の進め方

教職教養と専門教科の2本柱が筆記の中心になる。

教職教養は教育法規・教育心理・教育史が主な範囲だ。 新卒時に勉強した内容でも、数年のブランクで抜けていることが多い。 過去問集を1冊買って、出題傾向を把握することから始めるといい。

専門教科は担当教科の学習指導要領と専門知識が問われる。 現場で毎日教えているとはいえ、「試験の形式」に慣れていないと失点する。 こちらも過去問ベースで繰り返し解くことが近道だ。

論作文対策はAIを使う

採用試験の論作文は、書く練習量が直結する。 ただし「量をこなすだけ」では伸びない。 採点基準に沿ったフィードバックが必要だ。

勤務しながら予備校に通う時間が取れない人は、AI添削ツールを使う選択肢がある。 24時間いつでも提出でき、採点基準に基づいた具体的な修正指摘がもらえる。

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論作文の合否判定に悩んでいる人は、まず無料体験から試してみてほしい。

通信講座の活用

筆記・面接対策には、教員採用試験専門の通信講座も有効だ。 私立勤務しながらでも自分のペースで進められる。

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デメリットも正直に書く

転勤がある

公立は3〜5年での異動が基本だ。 「この地域から離れたくない」という事情がある人には、私立のほうが向いている場合もある。 ただし異動先の希望を出せる自治体もあり、すべてが遠方異動になるわけではない。

家族の事情がある場合は、受験先自治体の異動ルールを事前に確認しておくことをすすめる。 「同一市区町村内での異動が基本」という自治体もある。

部活動の負担

中学・高校の公立は部活動顧問の負担が依然としてある。 地域移行が進んでいる自治体もあるが、2026年時点では学校差が大きい。 受験する自治体の部活動方針を事前に調べておくこと。

「部活がない私立小学校から公立中学に転職したら、週3日の部活顧問になった」という話は実際にある。 校種や学校の状況を事前にリサーチすることが重要だ。

組織の硬さ

公立は規程・前例重視の文化が強い学校が多い。 私立の「柔軟な教育方針」に魅力を感じていた人は、逆カルチャーショックがある。 「どちらが正しい」ではなく、自分に何が合っているかで判断してほしい。


転職エージェントの活用

私立から公立への転職は採用試験が必須だが、「他業種への転職も視野に入れつつ、公立受験も並走させる」戦略もある。

教員専門の転職エージェントを使うことで、私立内での異動や他の教育関連ポジションとの比較もできる。 「公立に転職するか、教育業界の別職種に転換するか」という判断軸を整理するうえでも、エージェントとの面談は有効だ。

→ 教員向け転職エージェントの使い方はこちらで詳しく解説している。

→ 転職活動の全体像は教員の転職完全ガイドも参照してほしい。


FAQ

Q1. 私立教員は教員採用試験で「経験者枠」を使えますか?

自治体によって扱いが異なる。 「社会人経験者枠」の対象を「教職以外の職歴」に限定している自治体では使えない。 一方、「経験者教員選考」として私立教員経験も認める自治体もある。 受験する自治体の要項を必ず確認すること。

Q2. 何歳まで公立教員採用試験を受けられますか?

2026年時点で、全国の約8割の自治体が年齢上限を撤廃または60歳前後まで緩和している。 「40代でも受験できる」という自治体は増えている。 ただし年齢が上がるほど面接での実績アピールが重要になる。

Q3. 私立での勤続年数は公立の給与計算に反映されますか?

「号俸の加算(経験年数換算)」として一部反映される自治体が多い。 ただし、全額反映されるわけではなく、勤務した自治体の規定による。 採用時に人事担当者に確認するのが確実だ。

Q4. 私立の退職金はもらってから転職した方がいいですか?

退職金の受け取りタイミングは個人の状況による。 ただし、私立での退職金は転職のタイミングにかかわらず「そのときの在籍年数分」しか出ない。 「退職金が出る年数まで粘る」か「早期に転職して公立での在籍年数を積む」かはトレードオフだ。 30代前半なら公立に移った方が生涯退職金は多くなるケースが多い。

Q5. 私立勤務しながら採用試験に合格した人は実際にいますか?

いる。 特に30代以降の受験者では、現場経験を活かした面接・論作文での突破例が多い。 ただし、筆記のブランクを埋める勉強量は必要だ。 1〜2年の準備期間を設けたうえで、計画的に進めることが現実的だ。

Q6. 教員採用試験の論作文対策は何をすればいいですか?

「書いてフィードバックをもらう」を繰り返すこと。 予備校に通う時間が取れない人は、AI添削ツールが有効だ。 採点基準に照らした具体的な修正指摘をもらえる。

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Q7. 私立教員の採用試験は何次まで受けますか?

自治体によって異なるが、一般的に1次(筆記)・2次(論作文・面接・実技)の2段階だ。 2次まで進んで不合格になる人も多い。 2次落ちの場合は論作文・面接の対策不足が原因のことが多い。


まとめ

私立から公立への転職は、「教員採用試験を受け直す」という一手間がある。 ただし、その先には安定した俸給表・手厚い退職金・整った共済制度が待っている。

年齢制限の緩和により、30代・40代でも受験できる自治体が増えた。 「今さら」と思わず、現在の待遇と比較したうえで判断してほしい。

まず動くなら、受験先の要項確認と論作文対策の開始が最初の一歩だ。 準備を始めた時点で、すでに動いていない人との差がつき始める。